神田橋條治先生へのQ&A

 2020年9月12日の開催を目指して、3月下旬に、精神科医・神田橋條治先生の来阪セミナーを企画しました。しかしこの企画は、新型コロナウイルス感染拡大を危惧して、6月16日に中止となりました。
 セミナーの事前準備として、参加希望者から『神田橋條治の精神科診察室』に関する質問を募っていましたが、そのご回答をお聞きする場がなくなったため、文章での回答をお願いいたしました。
 「はじめに」含め、以下が、神田橋先生からちょうだいしたご回答の全文です。(白柳直子)

はじめに

 いろいろな質問がありました。なかには個人的な事情からの質問が2、3ありましたが、参加者全員が共有できる回答にしたいので、個人的データは省略して回答しました。コロナの終息を願うや切、と言ったところです。(神田橋條治)

【1】臨床心理士 50台 男性 経験26年

問い:どうも私のセラピーがうまく行かない来談者がいるので、その人のことについて、信頼するスピリチュアルなチャネラーさんにアドバイスを求めたところ、「その来談者はあなたとは治療的相性があまり良くないので、他のプロを紹介するほうがいいです」と言われ、その通りにしました。
質問は、自分が援助できる相性の良い・悪い来談者をどう見分けるのか、です。

回答:我々は「客商売」ですから、相性を判定する主役は来談者です。カウンセリングを始めるにあたって、「カウンセリングには相性がとても大切ですから、数回行ってみて、相性がいま一つとかんじられたら、そうおっしゃって下さると、別なカウンセラーを紹介します」と言って、判定のための回数を取り決めて出発するのを習慣にしましょう。


問い:来談者の中には、良くなること(心の苦しみの原因を見つけてそれを解決すること)に対する無意識の大きな抵抗のある人がいると思います。それについてはどうやって解決すればいいでしょうか?

回答:「抵抗」という言葉を辞書の中から抹消しましょう。攻撃的な気分を引き出す自己暗示になりますから。存在するモノやコトにはそれなりの事情があるというのは、カウンセリングの基本仮説です。
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【2】精神科医、児童精神科医 40台 男性 経験12年

問い:(セミナーのための)質問については、再度本を読んでから、作成していきたいと思います。ただ、僕のような一般の精神科医として、また、神田橋先生のような特殊な技術がないような治療者でも、できる診療における患者さんを診ていく上で、どういったことをしていけば、治療の質を、今よりあげていけるのか?を教えていただきたい。
 僕自身は、現在、ブリーフセラピーを主に学び、定期的に、マスターセラピストに、日々の症例相談、指導を受けるということを、新たに開始し、日々の診療での実践的な治療技術を向上しているという手応えを持ちつつあります。
 神田橋先生が、普段の診療の質を、日々どうやってあげていったのか? そのエッセンスとして、自分でも取り入れられるものが、このセミナーに参加して得られたら嬉しいです。

回答:児童精神科をなさる方は村田豊久君(九大医学部同窓、九大精神科同門)の著作を熟読してください。彼は若いころに担当した自閉症スペクトラムの子どもたちに慕われて、いまも付き合っています。50年を超えるフォローアップから発せられる言葉は「宝石」です。
 ボクはウィニコットと握手したことがあります。その時の彼の不思議な感触が心に残って、しばらくして気がつきました、虚弱児で病弱だった幼い日に診察してもらった小児科医の掌の柔らかで温かい感触だったのです。ウィニコットは終生、一般の小児科外来をしていたと聞いたことがあります。週一日でも小児科入院科病院で勤務されるといいですね、「広くなければ浅くなる」といいます。
 さらに、言葉の無力な小児と老人では「触れたり触れられたり」の触角のコミュニケーションが心の触れ合いになります。
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【3】医師 60台 男性 経験35年

問い:私はもともとは外科医です。そのせいか、なかなか「口出し・手出し」をせずにいられない自分がいます。心理療法を学ぶようになり、その癖は排除し、患者さんの「自然治癒力」に任せることの大切さを学びました。それでも中々、その癖を排除しきることに困難を感じています。
 「口出し・手出し」は治療において、絶対的に不必要なものですか? 神田橋先生はどのようにして、「口出し・手出し」をコントロールされてこられましたか?

回答:医療はすべてそうですが、亜急性・慢性の病態では、治療者の全てを活用することが得策です。しかも外科医としての経験が資産です、活用してください。ボクは幼い時からおしゃべり人間でした。それを活用したのが現在のありようです。外科医の感性を生かすと「突っ込みを入れる」を言葉でする、緩急のセンスをお持ちではないですか?
 触診の手技も感性を広げると、「声で触診する」雰囲気ができますよ。


問い:患者さんが診察室に入ってこられた際の最初の質問や問いかけは、入室時の動作や雰囲気である程度の見立てをした後に考えられるのですか?

回答:患者が寛いだ状態で、信頼できる基本的な所見が得られます。入室は最新の緊張状況ですから、それをほぐすことが有用です。緊張の質はその患者の質も表します。それを一瞬に認知してほぐしを行うセンスは、あらゆる客商売のコツですが、武術のセンスに似ています。


問い:入江フィンガーテストを神田橋先生がどのように行われているのか拝見させて頂きたいです。そして、入江フィンガーテストはどのような時に使われますか。行う際に留意していらっしゃることはどんなことですか?

回答:入江フィンガーテストの詳細は『心身養生のコツ』に詳しく書いています。何の手技もそうですが、反復練習あるのみです。ただし、ボクはフィンガーテストをいまではあまり使っていません。『舌トントン』と『センサーとしてのからだ』だけで用が足りています。あらゆる手技は感性が鋭敏になると使われなくなります。
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【4】研修医 30台 女性 経験2か月

問い:『精神科診察室』では発達障害のケースは全員男性でした。女性の発達障害では、忖度への能力や共同作業への適応力は比較的保たれている場合も少なからずあるのではないかと愚察しますが、発達障害の女性を初診で診る時にどのように判断され、どのような助言をなさいますか? 男性との相違という観点で教えてください。

回答:ボクは発達障害をブローカ中枢下縁の邪気の有無と濃淡で察知し、複雑な刺激場面での対応力で判断します。女性は「受け身」の役割を振り当てられることが多いので、混乱を起しにくいと思います。「出ない杭は打たれない」のようです。
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【5】精神科医 40台 男性 経験23年

問い:神田橋先生が使われる「発達障害」という言葉についての質問です。「発達障害」という言葉は、聞いたときにはぱっとわかった気にさせてくれるのですが、ちょっと立ち止まって考えるとよくわからなくなるような、不思議な言葉だといつも思っています。『神田橋條治の精神科診察室』(以下、本書)129pに〈あなたも私も発達障害〉という一文があります。これは「発達障害の人にみられる特徴を、どんな人でも、パターンいろいろかもしれないけれども、少しはもっている」ということでしょうか。
 ケース5(本書122p)をめぐり、神田橋先生は「うつ病については、ボクは近頃は、一種の発達障害かもしれないという気もしているんです。本物のうつ病はね」(本書124p)と語られています。その言葉から、神田橋先生はある「気質」の特徴を、発達障害の人のもつ特徴と、同じような水準のものとしてみているように思いました。いつも本を読みながら混乱してしまうのですが、神田橋先生の使われる「発達障害」という言葉は、あるときは精神障害の名前であり、あるときはその人がもっている心理的な発達上の特性や場合によっては気質をさす言葉でもある、という二重性をもつ言葉なのでしょうか。

回答:12pで語っているように、ボクは、診断ではなく「サーヴィスのための判断」をしているのです。ボクの中にある図式は、遺伝体質、発達障害、幼時体験、トラウマ、脳障害、適応障害、医療過誤、の層構造であり、サーヴィスの可能性次第で、判断の位置が変わります。うつ病は適応障害としてのサーヴィスよりも、発達障害としてのサーヴィスの方が患者の利益が大きいかなあと思うようになっているのです。


問い:ケース2(10歳の発達障害)に出てくる漢方についての質問です。本書54pに「あとはまあ、漢方は割に拒否反応が少ないから、合うのを処方したり。たとえば小建中湯とかを出してみたりします」という神田橋先生の言葉があります。これはフラッシュバックに対して小建中湯を出すということでしょうか。それとも発達障害の子の小脳の〈邪氣〉に対して小建中湯を出すということでしょうか?

回答:ADHDの子は、ストラテラを出すかどうか迷います。発達障害の成因は主として環境汚染(49pの文献45参照)であると思うので、化学物質を薬として投与することの損得を思い、迷います。小建中湯は「虚弱児」への頻用処方なので、本人の体が嫌わないなら第一選択とします。『舌トントン』で判断し『Oリングテスト』で家族と合意し、子供が飲むなら処方します。無理して飲ませるほどの薬効はありません。


問い:フラッシュバックの治療において、〈五本ゆびいい子〉を自分の精神科診察にどういうふうに導入したらよいかという質問です。本書52pに、フラッシュバックのことと、〈五本ゆびいい子〉と〈焼酎風呂〉のことが書いてありました。私は田舎の精神科病院で精神科医をしています。外来で「双極性障害」や「神経症」や「発達障害」として診ている人たちのなかに、フラッシュバックと思われる症状がある方たちがいます。また、成人となった知的障害の人も診ていますが、その中にもフラッシュバックを思わせる突然のパニックや興奮がみられる人がいます。以前にも、〈五本ゆびいい子〉のことを、神田橋先生の外来の陪席に行かれている先生からお聞きしたこともあり、フラッシュバックがみられている人に役立てられないかと考えました。そこで、まずは自分に試してみようと思い、仕事で疲れることがあった時などに、やってみています。〈五本ゆびいい子〉を自分でやってみた実感としては「かっかしていた頭が、なにかごまかされたようになって冷えて治まる」という感じです。その後で〈焼酎風呂〉に入ると、ホカホカとして心地よく、しんどいことや気になることがあってもあとをひきません。自分の養生法としては合っているようです。ところが、いざ自分の外来でと考えたときに、「気功」というところで引っかかってしまいました。自分の診療で「気功」は用いていませんし、「気功」に馴染みや知識もありません。そこで数人に、フラッシュバックの説明をした上で、「自分が尊敬している神田橋先生という方がいらっしゃるのですが、その方がフラッシュバックに対する健康法として〈五本ゆびいい子〉というのを開発されたので、やってみませんか」とすすめ、「ゆほびか」のコピーを渡してみました。すると、〈焼酎風呂〉はやってみてくれる人が多く、中には「夫にも勧めてやってみたら、夫の体臭が減ったんですよ」と面白そうに報告してくれる人もいました。しかし、〈五本ゆびいい子〉に関しては、パンフレットをすすめるだけではうまくいきませんでした(1~2回やってみてやめてしまいます)。パンフレットを渡すだけでは、治療者と「ともに」やっているという雰囲気ができないせいかとも思いますが、自分の外来診療で実際に〈五本ゆびいい子〉を一緒にやってみるということに迷いがあります。「治療に役立つのだからやればよい」という意見もあると思いますしそのとおりだと思う一方、精神科病院の勤務医が一般的な精神科診察をする中で、「気功」をすすめるということをどう位置づければいいのか、自分の中で答えがまだ出せません。「あまり意味のないこだわりかもしれない」と思いつつも、そのこだわりをほっておくのも気持ち悪いところです。〈五本ゆびいい子〉を無理ない形で自分の診療に取り込むにはどうすればいいでしょうか。「気功」やサプリメントなど自分のこれまでの診療に馴染みがなかったものを、無理のない形で自分の診療に取り入れるにはどういう工夫をしたらいいものでしょうか。

回答:まず基本的なことを2点お話しします。ひとつは、「EMDR」でも「五本ゆびいい子」でも即効性のある処置は、解離を起させて、とりあえず落ち着かせるのであり、解決の先送りですから「ごまかされている」感じは正解です。もうひとつは、「五本ゆびいい子」は気功ではなく、「経絡治療」の簡易版です。『神田橋條治が教える、養生のための経絡・ツボ療法』(2020、創元社)をご覧ください。診察室で子供に両足を出させて、トラウマ体験を想起させて、それを親に「五本ゆびいい子」で鎮静させるのが指導法です。


問い:統合失調症の治療に関しての質問です。本書では、ケース7として統合失調症の外来治療例が載っています(150p)。初診で漢方と睡眠薬のみから治療を開始し、のちに〈本人が同意できる病的な部分・症状〉を抽出しつつ向精神薬を導入するという流れ。すごいなあと思いながらも、自分ではこううまくはいかないなとも考えつつ、読ませていただきました。現在、私は単科精神科病院で仕事をしており、統合失調症の初診や再発の患者も診ています。外来で治療を開始できる場合も多くあります。しかしその一方で、患者の幻覚妄想状態が強く、診察で〈本人が同意できる病的な部分・症状〉をうまく抽出できない場合もあります(私の臨床能力が未熟なせいもあるかと思いますが)。例えば、患者本人は「どうもないので治療はまったく必要ありません」といい、家族は「これまでなんとか家でみてきましたが、家で大声で独り言を言っているし、被害的で興奮して暴れるし、もう限界です」と訴える、という状況に診察の場が陥ったりします。そういうとき、本人に「今はそうとは思えないかもしれないけれども、休んで治療を受ける必要があると私は判断します。申し訳ないけれども入院して治療を受けて下さい」と説明し、強制入院とすることもあります。強制入院とした場合には、改めて入院してからも〈本人が同意できる病的な部分・症状〉を探りつつ、治療の必要性を説明していくようにしています。このような形での強制入院を経ることで、ようやく治療にのって落ち着く人もいますし、やむを得ないと思う一方で、「もう少しなんとか柔らかく治療に導入できなかったか」と苦い思いをするところでもあります。私は退院後も、本人を外来で診ることが多いため、「入院になったときの先生の顔、怖かったよ」と、外来になってから本人から言われることもありました(言ってもらえるだけましなのかもしれませんが)。外来でできない状態にある(入院が必要と考えられるような)統合失調症のケースについて、神田橋先生はどのように入院治療に導入していくのでしょうか。具体的に教えていただけると幸いです。

回答:統合失調症についての近年最高のお仕事は、P176に紹介している糸川昌成先生の研究成果です。ぜひお読みください。糸川先生の統合失調症の二分法の中の活性ビタミンB6の有効群を、ボクは発達障害の発展群であると考えています。その群は、健康な機能部分が「病気・治療」という考えを拒否しますのでとても手ごわいですが、発達障害の苦労の歴史という考えは、体験をもとに受け入れるものです。発達障害の無い、中核群としての統合失調症は「保護」の提案を受け入れやすいようです。「手ごわい精神機能は健康な部分である」と一般化して置くのは、臨床場面でしばしば有用です。


問い:統合失調症の治療に関する質問です。本書163pに、統合失調症の人の診断として、薬に対してどういう態度をとるかで評価をするという話があり、大変参考になりました。統合失調症の人の中には、減薬や薬の中止を希望される人がいます。統合失調症の人が減薬を希望する時には、実際に副作用で困っている場合と、(副作用の影響だけではなく)病状の微細な悪化のため治療そのものから遠ざかろうとしている場合の2つの場合があるように思います。前者の場合には、具体的に減薬の相談を本人としていくことで解決することが多いです。ところが、後者の場合、本人が言う通りに減薬するとその診察の場面では落ち着いているのですが、減薬したことにより段々と病状が増悪し、更に治療から遠ざかろうとする構えが強くなり、最終的に再発してしまう場合が多いです。「実験で薬を減らしてみよう。しんどいようなら元の量に戻そう」と説明し、本人がその場で同意していても、その後、もとに戻すという選択をしてもらえないのです。そこで、「本人が実感できる範囲での不調を拾って、薬の調整をしていくよう一緒に話をする」ということを目指そうとしてみるのですが、これもまた、なかなかうまくいきません。「減薬しないこと」自体が本人を脅かしてしまい(「信じてもらえない」と思うようです)、時には受診が途切れて再燃してしまいます。統合失調症が不安定となったタイミングでの減薬希望に対する対応は難しい、といつも思っています。こういう状況で、統合失調症の人を脅かさず、より安定するようにもっていくためには、どのように対応、サポートがよいと神田橋先生はお考えでしょうか。

回答:勝手に外来に来なくなって再燃して連れてこられるという、ボクが若いころの統合失調症診療とは、格段の差です。薬物減量というテーマについて、これはまことに現実的テーマですから、現実的対話のチャンス到来です。まず、薬剤それぞれの薬理作用とそれが貴方に処方されている理由とを説明する。入院以来の病状の推移についてのこちらの情報把握と本人の記憶との突合せをする。本人の減薬希求の動機を訊く(病気が改善したとの証拠・確認を意図していることが多い)、こちらの改善所見を伝える。つまり両者の手の内を突き合わせて実験計画を話し合うのです。実験には予測が必要ですから、双方の予測を話し合います。これらはすべて、社会の中での会話・交渉のトレーニングです。減楽の提案の活用です。実験結果が悪くてもがっかりすることではなく、次の実験のための情報となると告げて、共同実験を作成し、毎週来院を3か月ぐらいするのがいいです。
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【6】精神科医 50台 男性 経験20年

問い:P84 愛着障害について。陪席させていただいた診察でのことです。神田橋先生が患者さんに〈コアラの気功〉をしてもらった際に、時によっては、「子どもの時の、ほんとのおんぶとは違うけども、ほんとのおんぶかのような、ごっこなんだけれどねぇ」と付け加えてお話しされることがありました。どのようなことに気付かれてのことでしょうか? 患者さんは、より柔らかな雰囲気になったように感じました。

回答:「ごっこ遊び」の能力のある、経験のある子には、当人の既知の世界の中に新しい課題をするので不安がありません。そうでない子には、治療者も恐る恐るするのが、当人への共感(ともにある)となります。その見極めは、常に努力していると容易にできるようになります。
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【7】臨床心理士 40台 男性 経験10年

問い: 〈地球におんぶ〉や〈コアラの気功〉ができない人、合わない人には、どう治療されていますか。〈五本ゆびいい子〉で効果の見られなかった人へのフラッシュバックの抑え方はどうされていますか。

回答:貴方がしてみて、どんな風にできなかったか、合わなかったか、どうやって効果が見られなかったか、さまざまな場合があり、それは薬物治療でも同じですが、上手く行ったときは嬉しくても勉強にはなりません。ダメなときは研究資料の宝庫です。そこから次の発展が生まれます。実務家は工夫です。
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【8】公務員 50台 男性 経験32年

問い:非行少年・少女に相対しているときの様子や非行(行動化)と無気力な生活ぶりの振れ幅の大きさを、双極性障害の特性・バイオリズム(波)という視点でとらえるという発想をすることはありませんでした。双極性障害を視野に入れた面接を行う場合、面接の際の留意点としては、面接時の少年・少女の様子や、親の特性を確認することの他、どのようなことに注目すればいいでしょうか?

回答:双極性障害は極めて遺伝性の資質です。次のような特徴があります。〈1〉両親の親族に、気分の浮き沈みの体質の人がいる。〈2〉幼稚園時代、友達との充実した楽しい付き合いの体験がある。〈3〉人間関係が好きな性格。〈4〉中学時代にスランプの時期がある(躁うつの波の多くは、中学時代に初発して、自然寛解しています)。〈5〉睡眠時間が短い体質だった。〈6〉気分がいい時には、アイデアが湧く。〈7〉窮屈が苦手で、気さくな場が好き。以上の特徴の半分ぐらいあればほぼ診断確定でしょう。精神科受診で薬物の効果をみましょう。
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【9】臨床心理士 40台 男性 経験20年

問い:ケース6(P140)アルコール依存症について。アルコール依存症の土台にうつ病・双極性障害・発達障害がある場合があるという内容でしたが、双極性障害の際には「すっかりお酒をやめていた時期があったの?」とか聞くとのことでした。
 昔、神田橋先生からアルコール依存症には2つの雰囲気があって、一つは双極性障害の雰囲気と、もう一つはとっつきにくい重苦しい感じがある人というのを伺ったことがあります。後者の雰囲気というのはこの本であげられている、うつ病や発達障害ということでしょうか。その際の雰囲気はどんな感じなのか、もしかしたら業の問題や愛着障害からくる重苦しさなのかなあと思ったりするのですが、そういったことへの対処としてのアルコールと考えていくことはできないでしょうか。

回答:すっかりやめていた時期があれば、アルコール依存症ではないのです。薬として飲んでいるのです。双極性障害でもアルコール依存症になっていると虜になっています。「愁いを払う玉帚」として飲んでいる人も薬として飲んでいる人です。
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【10】発達障害の子を持つ母

問い:現在医療で処方されている薬がエビリファイ1g朝晩、柴胡加竜骨牡蛎湯6錠を朝晩。しかし彼はこれを自己流に飲んでいます。調子のいい時はまず飲みません。どうしても調子の悪い時は夜エビリファイを1錠飲むくらいです。睡眠も2日に一度であったり、かなり自己流です。食事であったり、改善点を一緒に考えてみたりもしますが、なかなか定着しません。緊急事態宣言が解除され、首の痛みが取れたら、自転車で旅に出たいそうです。冒険に出て、自分のレベルを上げてから、これからの進路を考えるとの事。とても自由な精神を持っているところが彼の長所でもあります。

回答:エビリファイは副作用の少ない薬です。発達障害の主因は農薬汚染であると想像していますので、化学薬品をキチンと飲むのは賛成しません。自分のしたいことをするのは脳の成長に最もよいと思います。
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【11】臨床心理士 40台 女性 経験20年

問:解離について(『神田橋條治の精神科診察室』P105~116)。〈解離しなくてもよいのだよ〉というメッセージと、その時(瞬間の)治療の場の雰囲気について。解離の症状をもつであろうと察知したクライエント(患者)との治療の場は「取捨選択して話しても、統合性が少なくても、曖昧であってもそれでOKである」という雰囲気であることを心掛けています。
 クライエント(患者)との対話の中で治療者が「この部分は問うことをためらうなあ」と意識的に問うことを選択しない場合と、クライエント(患者)との対話の《振り返り》の中で治療者が「なぜにこの部分は問うことをしなかったのだろう」と問わなかった意味を考える場合があります。それ(問わなかったその部分)はクライエント(患者)にとって《何か重要なものである感覚》があるためにぼんやりと漂うように置いて、クライエント(患者)が「実は……」と話された時に、いつでも共有できるように準備しています。
 その治療者としての姿勢のようなものが、神田橋先生が仰る〈ボクとの関係において、解離はぜひ、必要ではないよ〉というメッセージとしてクライエント(患者)の無意識に届いているのか? それとも、他に言葉で伝えるとよりクライエント(患者)が支持される体験になるのか……ご教示ください。

回答:精神分析における「無意識の連続性の原理」をボクは大切にしていますので、「解離」は解離作業という連結で繋がっていると思って接しています。貴女の姿勢で良いと思います。切れていると感じたら、無理にでも「繋がっているのだ」と自分に言い聞かせます。
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【12】臨床心理士 50台 女性 経験24年

問い:神田橋先生は「自然治癒力」「フラクタル」を取り込み、常に新しい治療法を開発してこられましたが、神田橋先生との相互作用の場の診察室で、患者さん自身が自ら、自分に合った治療法(対処療法含む)を生み出すケースはどのくらいありましたか? もしあれば、その具体例をいくつか教えて下さい。患者さんが自分にあったベストな治療法を生み出すのに、脳の松果体の活性化がポイントなのではと私は直感的に思うのですが、これについての神田橋先生のお考えもお聞かせ下さい。

回答:直感的な「ひらめき」は、連続性が切れている状態では「症状」です。このひらめきの生じたプロセス、そして松果体の機能についての古今の学説や現在の学説を調べてごらんなさい。貴女はボクと似た資質のようですから、「ひらめき」から意見を創設する時期が来ています。後輩たちのために。
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【13】患者の家族 40台 男性

問い:別れた妻から体調不良を理由に、こどもの養育してほしいとの連絡があり、親権変更の調停後、1年前から私が養育しています。

回答:母と別れた子供は、愛着障害の状態にあります。父親でも「おんぶ」による「コアラの気功」は有効ですから、毎晩して上げてください。お父さんとお風呂に入る「裸の付き合い」も愛着の充足になります。
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【14】スクールカウンセラー 30台 男性 経験13年

問い:発達障害に有効なサプリメントについて。『診察室』にはビタミンB6、マルチビタミン、春ウコンなどが挙げられていますが、これらはそれぞれ効能が異なるのでしょうか? 春ウコンについては、社会生活に適応することによる脳の疲れを和らげるようですし、『いのちはモビール』では麻の実ナッツにより、コミュニケーションに柔軟さが出てきた方のエピソードが出てきます。そのあたりを詳しく伺いたく思います。

回答:ボクは「気」で探してビタミンB6とマルチビタミンをみつけました。その後、糸川先生の「活性型ビタミンB6」の考えを知りました。効能については糸川先生の書かれたものをお読みください。春ウコンは小脳の疲れを取るのに誰でも有用です。発達障害の人は脳が苦労し続けですから有用です。ともかく、脳の発達には栄養が必要です。あとは相性でしょう。
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【15】心理療法士 50台 女性 経験20年

問い:P78 境界例 治療者側の「報告して」「教えてね」について、以下のように理解しましたが、いかがでしょうか。日常生活で常に治療者のことを意識することになっており、それは、ひとりでない感覚、子どもが親に「ねえ、聞いて」って甘える姿に通じる気がしました。治療者が内在化され、安心感のもとで大きく抱えられた中での自由さをイメージしました。生活の中に治療的な工夫をやってみて、治療者に報告する。その報告の前に「観察」がある。この「観察」という行為は、自らを客観する視点であり、すなわちそれは治療的に働くのだと考えました。

回答:治療は共同作業であることを、折々に示すことが必要です。だって、それは事実なのです。うっかり忘れている人が多いです。


問い: P145 パチンコ、リストカット、食異常行動を何かの対処行動として考え、「(それらは)何かの役に立っているからやめられないんだ」と投げかける。そういうと本人の雰囲気にぱっと明かりがつく感じ。についてです。このことは、行動を否定されなかった、Holdingされたポジティブな体験であるとともに、何かの役に立っている。の 何か に向き合わせる、直面化 もさせているのではないかと思いました。依存行動は何の役に立っていたのか、それに気づくことは自分の弱さを知ることになる。一方で、それに気づくことは、それだけ自我が耐えられる、健康度が増している、ということでしょうか。

回答:そんなにごちゃごちゃ考えずに、事実をありのままに述べたのであって、皆がうっかりか、どうしてか忘れていることを、目を覚まさせるだけです。
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のぞみ整体院