のぞみ整体院
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整体・身体観 34

230703 反り腰を弱めること

 長く整体の仕事をしていると、〈この状態・この症状には、この施術をすれば改善できる〉みたいな、鉄板の技法・特効薬的施術方法が定まることがあります。私の場合、最初に定まったのは(追突事故の後遺症を始めとした)ムチウチへの施術かなと思いますが、最近は、腰に原因があって主に下肢に症状が出るタイプの〈病変〉――お客さんから聞く〈診断名*〉でいうと脊柱管狭窄症、股関節・背骨の変形性関節症、腰の椎間板ヘルニアなどへの施術についても一定のパターンが見えてきた手応えがあります。

*整体屋がお客さんから聞く〈診断名〉については、MRIで確定診断の付いたものからお客さんの自己申告(「ネットで調べたらたぶんコレっぽい」)まで、広い幅があります。なんとなく、あんな感じの症状のことかな、とイメージくだされば嬉しいです。


 そのパターンというのは〈反り腰を弱める〉で、大事なコツは、ちょっとした筋トレを組み合わせてもらうことです。というか多分、整体だけで改善するのは実質ムリだ、でも筋トレを組み合わせれば意外にすんなり改善できるぞ、と気付いたことが、私には重要だったように思います。
 筋トレといっても難しい・ハードなものではありません。施術で改善した筋肉状態に合わせて動き方を変えてもらうためのきっかけ作りみたいなものです。要は、〈この辺りの筋肉の修理は済んだから、ちょっと使ってみて?〉の、お試しの動きです。

 そしてここで大事なのは〈筋トレの開始時期を見極める〉ことと〈仕方をちゃんと説明する〉ことです。施術が十分に進んでいないうちに始めてもらうと無意味、場合によっては有害でさえあるし、正しく力を掛けないと、これまた無意味/有害になりえます。
 足が痛い・ちょっとの時間も歩けないというのは不自由しますから、「自分なりに体操をしています」「鍛えています」と言われるお客さんは多い。でもどんな体操をしているのか教えてもらうと、私的には、うーん……それはちょっと、みたいな体操をされている場合が少なくない。でも良かれと思って一生懸命しておられるものを私風情がいきなり否定するのもどうか……以前の私はそこに困っていました。私的には有害っぽく思える体操を、整体屋として係わりながら、このまま続けてもらっていて良いのか……? でも近頃は、まあ、どっちでも良いかと、軽く考えられるようになりました。そもそも無茶なことさえしなければ体操で身体を傷めることはそれほど無いし(むしろ危ないのはストレッチ)、施術がうまくいって着実に状態が変わっているならば、体操が身体に与える影響も変化するだろう、と。だからまあ、「ほどほどにねー」とだけ言っておけば良いかな、と思えるようになりました。これは、楽です。

 ともかくいまの私の仕方としては、最初の数回はじっくり施術に専念して、状態の改善が十分に確認できたら筋トレの仕方を説明する。そして実際にその場で何度か動いてもらってお客さんが正しい仕方を実感されたら、ときどき家でしてもらう。そうすると次回の来院時には、残された問題点が明確になっていますから、私は作業の続きをする。ここまでで4〜5回の施術、期間にして1〜2ヵ月を想定してもらい、焦らないようお願いする。施術する私も焦らないよう心掛ける。
 筋肉の状態はこの頃までにいろいろ変わっているはずですが、恐ろしいのは、ご本人の痛みの実感と筋肉の状態が必ずしも一致しない場合があることです。痛みの理由はいろいろですから、整体屋から見て筋肉は十分良くなっているように思えても、筋肉じゃない部分に由来する痛みは変わらず継続しているかもしれません。その場合は、そのかたの痛みに対して整体屋にできることは無いかもしれず、別の手立てを探してもらう必要があります。

 ムチウチの後遺症は1〜2回の施術でガラッと改善することが多く、スピーディです。だからお客さんにも私にも、結果のありようがわかりやすい。一方の反り腰系問題は、施術と筋トレが十分うまくいっている場合であっても、筋肉のはたらきが充実してくるまでには少々時間が掛かります。当人の年齢や日常の活動量(=天然にして最大の筋トレ!)によって個人差も大きい。
 だからこそ、時間は掛かっているけれど良くなっている? 変化している?を常に気にしながら、作業を進めなきゃなりません。もちろん、うまくいくと、すこぶる愉しい。


230724 くり返すぎっくり腰と車の正面衝突事故の後遺症

 Pさんは10年ほど前から来られているお客さんです。10年ほど前、と言っても数年間転勤で遠方に越しておられたり、もともとが「困ったときに来てください」式のタイミングで来院をお願いしていたこともあってときどき・ぽつぽつの頻度でしか来る必要がなかったりで、施術の回数自体はそれほど多くありません(全部で20時間くらい)
 初めて来院されたのは、その1ヵ月前に交通事故に遭われ、運転席で車vs車で正面衝突されたことがきっかけでした。整骨院に通っているけれど良くならない、と、友人・家族の紹介を受けて来られました。

 初回は2時間続けて施術。車の事故にありがちなイヤな症状がいろいろあって、ふらふらの状態で来られました。2回目はその2週間後に来てもらい、1時間施術。ずいぶんしゃっきりしておられて、まあまあ、一段落はしましたかね〜の軽さでお別れしました。
 その後、Pさんは転勤されて間が開き、大阪に帰ってこられて以降は「ぎっくり腰をしました」と言って来院されるのが常でした。その際も、事故直後に見られた症状を訴えられることはほとんどなく、数年の間は腰の痛みのみ、去年くらいから左肩の痛みも聞くようになりました。


 私が想定する典型的な〈追突事故によるムチウチ〉は、後方から車に当たられた、というものです。これは比較的、施術・改善するのは簡単な場合が多い。何というか、対処のパターンが決まっているのです。複雑になってくるのは、横から当たられたとか車ごと飛ばされてぐるぐる回転したとか、身体にどんな衝撃が加わっているのかが具体的にイメージしにくい場合です。
 そしてもう一つ施術を難しくする要素は、事故時に運転席に座っていたかどうか、です。運転席に座っているとミラーその他のおかげでそもそも事故が予測しやすいので、ハンドルに手を突っ張ったり・ブレーキを踏みこんで衝撃に備えたりと、極度に身体を緊張させた状態でガツンとなる場合が多い。これ自体は自然なことなので、脱力しておいたほうが良いとか悪いとかの話ではなく、なるようにしかならない種類の反応だと思います。が、問題は、私が施術するとき、です。

 この、踏ん張った・突っ張った状態で衝撃を受けて傷めた筋肉・骨を見つけ出すのが、私はあんまり上手くない……というか、結構下手らしいことが問題なのです。いったん見つけてしまえば作業自体はそこそこ単純で、手間は掛かるけれどできないことはない。けれど見つけ出すのが! 見つけ出すのが……ああ!という感じなのです。
 〈〈癒着剥がしをする私〉が対応すべき問題がある〉ことはわかるのです。少なくとも、さっぱり手に負えない感じはしない。でも、「あ、なるほど、ここが問題の核心部分か」と、すんなり見つけられることがとても少ない。あっちに施術したり・こっちを調べてみたり、散々あれこれ手こずった挙句に、「ここかぁ……」やっと見つかる。

 Pさんのときも同様で、わりと初期から右腕に問題があるらしいとは疑っていました。施術もちょこちょこしてはいる。けれど〈ハンドルに突っ張ったために右手首から肘が圧縮されている。これが問題の核心だ!〉と確信できたのはつい前々回のことで、「何でいままで掛かるんだ……」鈍い自分が腹立たしくてしょうがない。
 そこで私自身の今後の方針としては、なんだかよく分からん泥沼にハマりかけたら、「圧縮系?」ととりあえず疑ってみることにします。これでもうちょっと段取り良く進むようになれば作業時間短縮達成、無駄なストレスは減るでしょう、たぶん。


 ぎっくり腰をそこそこの頻度で繰り返す人の場合、手指・腕に癒着のある場合が多いように感じます。
 「ぎっくり腰をしました……」とお客さんがよろよろ入って来られたときに、既にある痛みを鎮めてしまうのはそれほど難しくないです。炎症の深さ・程度にもよりますが、単純なぎっくり腰であれば、早ければ施術直後から・遅くとも1〜2日の内にはかなり普段通りに動けるようにはなります。単純なぎっくり腰でなく椎間板ヘルニアなどが絡んでいるような場合であれば、さくっと改善することはあまりなく、「ちょっとはマシだけれどやっぱりおかしい、痛い」とか「腰は良いけど足が痛くなってきた」とか、微妙に様子を変えた嫌な症状が残るので、その場合は作業工程を考え直します。

 話を〈単純なぎっくり腰〉に戻すと、「腰が痛い」と言って来られても、施術はその原因部分である手指・腕にしていきます。もともとが手指・腕をかばっての無理が重なって腰が調子を崩したわけですから、かばう必要がなくなれば、腰は自然に回復します。私が狙いたいのは、〈これを最後に今後、ぎっくり腰は起こらない〉という状態です。
 いままでうまくいかなかったPさんも、この、腕の圧縮を解除する一連の施術が一段落した暁には、ぎっくり腰と縁が切れていることを願います。


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