のぞみ整体院
(完全予約制)072-250-5570

整体・身体観 31

210914 腰痛の原因は手の指にある癒着

 「身体の調子に合わせて来たいときに来てください」とお願いしているお客さん(=Pさん)が、いつもより少し早いタイミングで来られました。
 施術して→安定状態になって→徐々にほころびが見えてきて→「何かの拍子にここが痛い」「あそこが気になる」となるのがだいたい3〜4週間後。そこから予約して店に来られると月に1回弱くらいのペースになるわけですが、そんなPさんが、2週間ちょっとで来店されるのは少々早すぎます。何かあったのかしら?と構えていると、「前回の後、身体の調子が良かったのでつい動いてしまいました」と、明るい苦笑いで来られました。

 2日前に大荷物の買い物をして帰宅、草臥れたので変な姿勢だったけどしゃがんでちょっと一休み……。で、立ち上がろうとしたら両方の股関節と腰に激痛があった。翌日すぐにも整体に来たかったけれど雨だったから出られず、今日になった。その間、冷やしたり湿布したり痛み止めを飲んだりしてみたけどどれも効かなかった、とのことでした。

 「ふとした拍子に腰が痛くなって」と聞くとぎっくり腰を思いますが、「股関節が両方とも痛い」と言われると、なんだかちょっと感触が違うようにも思えます。
 大抵のぎっくり腰はおなかの奥の筋肉に起こる〈こむら返り〉で、左右どちらかの筋肉が起こす〈ヘンな緊張〉ですから、痛みに左右差があります。しゃがんでいて立ち上がった拍子に左右同時に〈こむら返り〉、というのもなくはないでしょうが、そうなのかなあ……?

 考えていてもわかりませんから、とりあえず施術しようっと。検査にかかると、問題があったのは右手の親指でした。
 実はこの数回にわたって、Pさんへの整体の一番の課題は〈右上肢の具合を立て直す〉でした。背中、肩、腕、肘と順番に進んできて、前々回あたりからは右手の指が主な〈作業場〉です。そう考えると、来店時にお聞きした症状は〈突然〉起こった激しい痛みのようですが、その基になっているのは〈既にあった〉身体の偏り、といえそうです。つまり、〈右上肢の頼りなさを背中の上側が支えていたけれど、大荷物の負担に耐え切れず、腰にまでしわ寄せが及んだ〉、というような。

 「腰が痛い。とっても腰が痛い」と聞きながらひたすら手の指1本に施術するのはなかなか度胸の要ることで、ずいぶん慣れてきたはずの私でも、毎度ヒヤヒヤします。時間みっちり指だけに施術して、「はい、終わり!」と言ってから「まだ腰が痛い……」とか言われようものなら、どうすれば良いのか……。びくびくしながら何度もこまめに検査して、ほんとにここの施術で良いの? ほんとに他のところに問題はないの? ガンガン石橋を叩きまくりながら施術して、時間になって、Pさんに立ち上がってもらうと――大丈夫のようでした。
 「腰はまだいくらか痛いけれど股関節はずいぶんマシです」と、すたすた歩いて帰られるPさんに、「調子が良かったらまた好きなように動いてくださいねー」と良い気分で言って、「でも痛みがあるようなら早めに来てくださいね」と保険もかけつつ送り出して、はあ、やれやれ、良かった良かった。結果オーライに一息つきました。で、気が付きましたがPさんは施術中、一言も「痛いのは腰ですが?」「施術は指ですか?」的なことを言われませんでした。「任す」と言ったら任す。胆の据わったかたです……。


210925 筋肉注射による副反応

 ワクチンの副反応というより筋肉注射されたことによる副反応、といったほうが適切なような状態のお客さんがちらほら来られるようになりました。うちの店でちらほら見かけるくらいですから、世間にはもっと多いのかもしれません――たぶんですが。
 自覚される症状はいろいろで、全身倦怠感みたいな一見ふつうの〈ワクチンの副反応〉みたいな状態の人から、もともとあった症状が憎悪した人、腕の痛みがなかなか取れない人、接種した左側にだけ肩こり・頭痛が出てきた人、……さまざまです。

 ワクチンの副反応の場合、問題になるのは、ワクチンに含まれる成分の〈身体にとっての異質さ〉でしょうが、筋肉注射による副反応では、血流の悪い筋肉内に想定外の液体が過剰に押し込まれたこと、その洗い流しと筋肉の状態復元に手間取っていること、の2つが問題になっている?ようです。私にはそれ以上の推測はできませんが、ともかく、腕の血流を改善して周囲の筋バランスが整うと、症状は改善するようです。

 筋肉注射を打って調子が崩れる現象は、〈ケガをして調子が崩れる〉〈手術をして調子が崩れる〉などと根っこはおそらく同じで、何とか保っていた全身のバランスが、想定外の事態によってごちゃごちゃになったということでしょう。
 ケガや手術の傷痕の場合、私の整体では癒着を剥がす必要があると考えますが、筋肉注射の場合は局部に入れた液体が打つなりさっと流れてしまえば問題は大きくならないはずで、もともと腕の筋肉はこっていない・血流はそれほど低下していない状態であれば、筋肉注射でも副反応は起こりにくいと想像できます。
 そういえばむかし、「筋肉注射の後はよく揉め」と言われたものですが、揉んで流せ、ということを言っていたのだな、と今更ながら納得しました。と言っても、注射直後にその部分を揉むなんて、それはそれで私には怖くてしたくない作業ですが。


211106 冷えと発熱

 「原因不明の発熱があった後からどうも身体の調子が良くありません」と、以前来られていたお客さん(=Pさん)が久しぶりに来られました。ちょうど1年ほど前に整体の作業が一段落したかたで、「また困ったことがあったら来てください」とお別れしていました。
 3日間熱が続いて、時期が時期ですから新型コロナの抗原検査とPCR検査を受けて、どちらも陰性。とりあえず、と処方された抗生物質を飲んではみたけれど喉・あご・顔周りの違和感が取れなくて、首から背中にかけての凝りもひどいから一度整体してください、とのことでした。

 聞くと、なんだかいろいろ検査はされていて、でもやっぱり発熱については原因不明のままで、Pさんはどうもそれが気がかりなご様子。聞いている私も、1回のPCRでは検出できなかっただけで実際は陽性だったのだろうか…?とかいろいろ想像はしてみるけれど、どうもあまりピンと来ない……。
 まあ、とりあえず私の仕事は原因究明でなく整体ですから、凝っている身体をゆるめれば良いんですよね、ということで施術を始めると、Pさんが雑談ふうに、「実はその前に薄着で自転車で走ったり、汗をかいたりして冷えていたんですよね」と、ポツリ。――「じゃそれじゃないですか!」

 相当に身体を冷やすとその反動で熱が出る、というのは中国医学的には当たり前のこととされていて、寒極まれば熱生ずだったか熱に転ずだったか、そんなような戒めというかことわりを読んだ記憶があります。「原因不明の発熱って、冷えただけのことじゃないんですか?」私が訊くと、病院では「それくらいでは熱は出ない」と言われた、とPさん。いろいろ検査をすることになったのはそのためだそうで、炎症反応と白血球の数値が上がっていたから感染症を疑われたのかも、とのことでしたが、その辺の解釈は私にはよくわかりません。

 とりあえずこわばった背中の凝りをゆるめて、ちょこちょこっと目に付いた癒着もついでにほどいて、「はい、終わり」。立ち上がっていただくと、違和感はマシになっている、とPさん。
 こわばった身体では、時間的に充分寝ていても疲れがきっちりとれていない可能性が高いので、その反動で、この1〜2日はめちゃくちゃ眠くなる可能性が高いです。なので、あったかくしてとにかくよく寝てください、それで状態が改善していたら続けて来てもらう必要はないです、とお伝えして別れました。


 以前もブログに書いたように思いますが、冷え⇒熱・微熱、のパターンは珍しくない連鎖です。実は私自身も学生時代に経験しています。
 対策は、まずはそもそも冷やさないこと。肌寒い時期の薄着は避ける。汗をかいたら着替える。寝ているときは部屋を極力〈密閉〉する(=窓とか扉を閉めて室外の空気との交流をなるべく減らす)。ひどい空腹に注意する。
 そして冷えを感じたらなるべく早くに温めること。じっくり入浴する。炬燵でじっくり温まる。暖かい布団・環境でとにかくよく寝る。温かい飲食物をたっぷり摂る。
 それでも解消できないくらいに冷えが芯にまで及んだ場合は、私自身は、整体して筋肉のバランスをいったんリセットするくらいしか、手立てを知りません。人によると、酵素風呂とかよく効く温泉とかでも良いのかもしれません(私は試してませんので確証はありません)。いずれにせよ、何かしら、ちょっと強い処置が必要になると思います。

 天然で寒い冬や承知の上で不自然に涼しい冷房下の夏と違って、自覚なく冷やす危険性が高いのは、春・秋です。日向はぬくく感じるけれど空気自体は意外なほどに冷たい。どうぞ、充分暖かい状態でお過ごしください!


211116 成長痛とスポーツ障害

 「成長痛とスポーツ障害はどう違うのですか?」お客さんから訊かれました。
 言葉通りの話でいうと、成長痛は子どもの身体が急速に成長するときに起こる痛みで、骨・筋肉の成長具合がちぐはぐなために起こるもの。スポーツ障害は急激あるいは反復的な筋肉の曲げ伸ばしに伴って生じる痛みで、筋肉の共同作業がちぐはぐになっている部分で生じるもの――ということになるのでしょうが、整体屋の作業としては、そんなに区別する必要を感じません。

 関節は常に2種類以上の筋肉で支えられています。脱力状態では全部の筋肉がほどほどに縮んでいて、それが関節を曲げるときになると、片方がぎゅっと縮んで反対側が弛む、と、そんな方式で関節にかかる圧力は制御されます。
 ある関節を支える筋肉群が全部〈健康〉なときには役割分担は簡単で、関節(=2つ以上の骨の間の隙間)にかかる負担はほどほど、筋肉の縮み・弛みもほどほどで収まります。ところがどこかの筋肉が〈不健康〉だと、その筋肉は縮んだり・弛んだりができなくなりますから、その他の筋肉群にしわ寄せがいって、縮み・弛みのバランスがいびつになったり骨に過剰な負担がかかったりします。そうして、〈健康〉な側の筋肉・腱・靭帯・骨などに痛みが出るわけです。

 なので整体の作業としては、〈不健康〉な筋肉をなるべく〈健康〉な状態に近づけるようあれこれがんばって、変な負担が「もともと〈健康〉だった患部」に集中しないように工夫する、これに限ります。
 診断名をつける必要のない私たち整体屋にとっては、「成長痛とスポーツ障害? まあ、似たようなもんだと思いますけどねー」で話は済んで、後は結果が出せるかどうかが勝負です。頭を使う部分が少ないので私は楽です。


211205 スノーボードとスケートボード

 Pさんは昨年からずっと継続的に来てくださっているお客さんです。
 初めて来られたときからすぐに「何だか得体の知れないしんどさがおありだなあ……」難しい施術になることは予測がついたので、最初の施術後にPさんにもそう伝えました。主訴は腕の痛みです。

 私が〈得体の知れないしんどさ〉を感じるときは、大抵、比較的幼い頃に大ケガの経験をされていて、その癒着が広範囲かつ深刻に広がっている場合が多いのですが、Pさんにそういったケガの心当たりはありません。
 「どこを傷めているのかなあ……?」できるところからせっせと施術を進めつつもケガの状況は把握できず首を傾げる私に、Pさんは、「思い当たるケガといったらスノーボードで何度も尻もちをついていたくらいですけど……」とおっしゃって、でも私は納得できなくて、「でも私がみる限り、Pさんの状態は〈尻もちのケガ〉という感じではないのですよね……」途方に暮れていました。

 整体をするにあたって〈ケガの状況がどんなだったか〉を知ることが絶対必要!、とは限りません。ご本人が憶えていないケガでも筋力検査で反応が拾えれば施術はするし、していればそのうち改善はしますから、良くなればそれで構わない。でも深刻な癒着の場合、〈どういうケガが起こっていたか〉〈この部分はどんなふうに傷めたのか〉が具体的にイメージできると、タタタタッと着実かつ速やかに施術が展開することが多い。
 それがあるので、〈どんなケガだったか〉を想像しながら施術するのは私には大事なのです。

 で、先日の施術でもまた、「何なのでしょうねえ?」「スノーボードしか」の対話になりました。Pさんが「〈手をついたら危ないから、転びそうになったら尻もちをつけ〉と習っていたので積極的に尻もちをついていました」と話されるのをお聞きしていて、ふと、私は自分の考え違いに気付きました。

 スケートボードはボードから足が離れるから素直な尻もちがつけるけれど、スノーボードは足が固定されているからボードごと尻もちをつきにいく格好になる=ふつうの尻もちより背中寄りの部分で着地することになる!
 もう少し具体的に言うと、スノーボードでは足首が固定されていて曲げられませんから、おしりの下側にある坐骨方向からストンと落ちることは難しくて、おしりの後面である仙骨側からバッタリ落ちることになります。
 そしてさらに、地面は雪で、クッション性がありますから打撲点がはっきりしません。硬い地面を走るスケートボードや硬い氷の上を滑るアイススケートであれば、「あ、ここから着地してますね」と、〈傷の中心点〉が癒着のでき方でわかりますが、ぶつけた相手が雪の上だとぼわっとぼやけてわからない。ましてや何度も尻もちをついていれば重なり合って何が何やら。

 スケートボードに乗ったことはあるけれどスノーボードを試したことがない私は、足とボードの関係と、それによって生じる〈まったく異なる尻もちのつき方〉に思い至りませんでした。
 「わかった! わかりました、すいません! 私、勘違いしてました!」Pさんに謝って説明して、Pさんは「いえいえ」許してくださいましたが、――良かった! これでぐっと改善する見通しが立ちました! 早く次の施術がしたい!です。


220109 スマホの動画で動作分析!

 新年おめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


 新年早々、スポーツをしておられるお客さん(=Pさん)から、ご自身の動きについて意見を求められました。スマホで撮った短い動画を見せられて、「どうでしょう?」というわけです。いやー、イマドキですわ〜。
 こういう経験、私にはあまりないことで、なんというか、新鮮で、ちょっと緊張しました。

 施術者によっては姿勢分析や動作分析を得意とし、また積極的に取り組むかたもあるようですが、私はもともとどちらの分析にもあまり興味がありません。もちろん、来店されて施術するまでの間にお客さんの動きや姿勢をぼんやり見て、「あれ、意外にお元気そうだな」とか「ずいぶんお疲れのようだな」くらいのことは感覚しますが、これは中国医学で言うところの〈望診〉であって、いわゆる分析らしい〈分析〉ではない。一時期、がんばって視診を試していたこともありますが、結局、じっくり眺める視診よりも、ぼんやり眺める望診のほうが私の性には合っているようで、じきにやめてしまいました。

 そんな私ですから、どう?って言われてもわかるかなあ……頼りない及び腰でPさんの動画を10回前後(?)、繰り返し見せてもらって、うーん…と考えて、「ここが気になっているのですか?」訊くと、「あ、そうです」。よかった、まるっきりハズレではなかったようです。

 動画を見る前にすでに症状の話は聞いていて、その話から私が想像していた〈身体の状況〉とご自身が気にされていた〈動きの不満〉とが一致しているようでしたので、施術しながら、私の理解する身体の状況と施術の方針をざっと説明しました。
 説明といってもちゃんとした〈講義〉ではないですからしっかり理解してもらえたかどうかは心もとないですが、とりあえず「フォームは、がんばって変えようとはしないでね」「特別なストレッチとかトレーニングは、がんばってはしないでね」「映像で動作を分析するよりも、自分の感覚と結果の手応えとで調子の良し悪しを把握するように努力してみてね」とお伝えして、近々もう一度来てもらうよう、お願いしました。

 「次回もまた動画を撮ってきて」とお願いするのは忘れましたが、ご自身の感覚で動きの不満が減っているようならば動画を見るまでもなくフォームも良くなっているでしょうし、私的にはそのほうが確実で大切な変化だと思います。
 そもそも身体の状態が良くなればフォームは勝手に良くなっているはず(←これが大事!)、ですから続きの施術をしてみれば、どれくらい動きが良くなっていそうかは大体の見当がつけられます。施術が下手なら動きはそのまま、施術がうまくいっていれば動きは変わる。身体はシンプルで正直です。

 とはいえ、動画でわかるくらいにはっきり変化していたら、それはそれでおもしろいので、憶えていたら、次回にでも「また動画を撮ってきて」とお願いしようと思います。


220122 不本意な冷えと本意な冷え

 Pさんは少し前から来られているお客さんで、典型的な〈虚弱体質〉のかたです。
 大抵の場合、虚弱体質の根っこには強い冷えがあって、冷えがあるから元気が出ない、動けない、身体の芯まで冷えておなかのはたらきも弱くなっているから食べても力が出せない、そもそもそんなに食べられない、……悪循環がいろいろ生じて二進も三進もいかなくなります。

 根本的な改善方法としては冷えをとる・身体を温めるを考えたいわけですが、私的には、そもそもなんでそんなに冷えているの?が大事な疑問になります。
 Pさんの場合、ご自身で記憶されている大きなケガはなかったために、私が整体を引き受けられるかどうかも含めて、「どこにどんな癒着があるのかしら?」を手探りで探すことから施術を始めました。そして幸い、「どうやら右手の親指の具合が悪いらしい」と、早々に見当がつきました。

 手指にできた小さいけれど深い傷、というのは深刻な影響を引き起こす場合が多いようで、根の深い肩こり・頭痛以外にも、冷えとか熱とか体温調整がおかしくなっている状況にちょいちょい遭遇します。科学的・西洋医学的な理屈はわかりませんが、イメージとしては、指先の傷痕からどんどん熱が漏れるから冷える、あるいはその冷えを補うためにガンガン熱を作るから、指先は適温、でも全身的には発熱過剰、みたいな状況が生じるのだと私は想像しています。

 Pさんには「私は親指が気になります!」と強気な宣言(?)をして理解を得、来店初回からほとんど右腕にしか施術していません。
 それでも先日、「これまで3分ほどで湯あたりしていたのが、気付いたら10分浸かっていられるようになっていました」と、喜びの報告をくださいましたので、無事に結果は出ているようです。

 ところで、熱には、身体にとって不本意なものと本意なものの二種類があると私は理解しています。不本意な熱の代表は熱中症で、本意な熱の代表は感染症による発熱。不本意な熱はさっさと解熱することが大切ですが、本意な熱は下げないほうが良い、もしくは下げるための処置がすんなり効かない場合がある。身体が意図的に体温を上げているからです。
 そしてこの理屈で考えると、本意な冷え・不本意な冷えだってあるだろう――とは思うのですが、不本意な冷えはともかく、本意な冷え=身体が意図的に体温を下げている状態、というのがイメージしにくかったのです。いったい、どういう事情があると身体は冷えていたがるのだろう??

 その答えのヒントが、Pさんの〈3分で湯あたり⇒10分浸かれるようになった〉にあるのでないかと思います。この間に整体で変えたのは親指の状態だけなので、指の調子が良くなってきたから、冷えをゆるめてもよくなった⇒入浴時間を延ばしても湯あたりしなくなった、と想像できます。
 体温が上がると身体の活性が上がります。その上がった活性を維持できないと判断すると、身体は冷えたままを選択するのかもしれません。
 入浴時間が延びてきた、歩きやすくなってきた、立っていても重心が定まっているように感じる、おなかの調子が落ち着いてきた、と、明らかに活性が上がりつつあるPさんへの施術は、まだしばらくは継続しますので、脱〈虚弱体質〉がどの程度達成してゆくか、愉しみです。


220217 足首が固い人にも自転車は良いらしい

 昨年10月頃に右膝を傷めました。太極拳の練習を再開しかけて、忘れていた動きを思い出すうち嬉しくなって、えいッと足を踏み下ろした瞬間、ビキッ! 情けないことです……。で、整体屋なので自分であちこち修理していますが、その中でおもしろいことに気付きました。
 自転車の効能、です。

 歩く・走る・自転車をこぐは、それぞれ筋肉の使い方が異なります。ですから人によって・身体の状態によって、向き・不向きというか合う・合わないができます。一般的な運動強度でいえば〈歩くより走るほうがしんどい〉わけですが、合う・合わないでいえば〈走るより歩くほうがしんどい〉場合もある、という具合です。

 私の場合、もともと自転車は好きで、歩く・走るは苦手。自転車なら2〜3時間乗っていても平気だけど歩きだと30分でへばってきます。走るは最近はほとんどしていません。右膝をビキッと傷めてからは歩くのも億劫で、曲げ伸ばしすると痛いしなんとなくずっと腫れぼったい。自転車も、仕事の行き帰りは平気だけど遠出しようとは思わない、そんな状態でした。幸い、あちこち施術するうちにだんだん状態は改善してきて、久しぶりに遠出しようかな、の気分になってきました。で、自転車に乗っていて気付いたのが、「ペダルと足首の関係がいつもより柔らかい!」。なんというか、なめらかに踏み込むために足首がペダルに〈協力〉している感じがあるのです。

 思い返してみると、私のこれまでのこぎ方は、〈踏み下ろす〉。餅つき機の杵みたいな下向きの努力でこいでいたのが、足首が動くようになると、〈回し踏み下ろす〉感じになりました。回転の要素が加わった、みたいな感じです。そしてできるようになってみると、明らかに〈回し踏み下ろす〉ほうがこぎ方として無駄がない。

 そうなってみて思うのは、歩く・走るが苦手だったのは足首がうまく使えなかったからなのかもしれません。
 自転車のペダルはそれ自体回転しますから、私のすね−足の角度が悪くても適当に対応してくれます。ですが地面は動きませんから、私のほうが合わせにいかなきゃなりません。それが下手だと、着地の衝撃をうまく中和・吸収しきれませんから、歩く・走るの負担はぐっと大きくなります。

 すでに膝を傷めた人、体重の負担が大きそうな人には自転車か水泳をお奨めする、というのが運動療法の定番でしょうが、その理由は〈膝への負担が少ないから〉だとばかり思っていました。けれど今回自分が変化を経験してみて分かったのは、足首が固い人にも自転車は優しい!でした。これは嬉しい発見です。


220307 ヘルペスの痕と口周りの施術

 もう10年くらい前になるか知れませんが、不摂生が祟って顔にヘルペスができたことがありました。唇の右斜め上の部分がわりと深くボコッとえぐれて、右目の下のたるみ部分も浅く喰われて、このままウイルスが脳に行ったら困るなあ…とビビりながらひたすら早寝して安静に努めていたところ、1週間くらい経ったときにスカッと、明らかに変化がわかる晴れやかさで、気が軽くなりました。
 ヘルペスとか免疫の作用については専門学校の授業で一通り聞いていましたので、気が晴れた瞬間、いま免疫の増員ができたのだ! これで治るぞ!と体感的に直感して、うれしかったのを憶えています。

 ウイルスに喰われた部分がふさがるにはそれからまだ1か月くらい(?)掛かり、年単位の時間が過ぎたいまもまだ瘢痕(はんこん)になって痕が残っています。コロナ前の時期に、たまたまバスで隣り合わせたよそのおじさんから「おしろいが固まりになっているよ」とこっそり〈教えて〉もらったことがありますから、近くで見たらわかる程度の痕です。

 2週間ほど前から、そこに施術ができ始めました。
 それまで私がしていた理解では、〈不摂生で身体が弱り、潜んでいたヘルペスウイルスが〈たまたま〉唇上部で暴れ出した〉。痕が残っているのは唇上部ですから、施術が必要になるのはまさにその瘢痕組織の部分だろうと思っていたのですが、実際は、それよりさらに深くて広いところ、口から頬にかけての筋肉層に施術することになりました。
 つまり〈たまたま唇上部〉で暴れたのではなく、〈そもそも弱っていたから唇上部〉が狙われた、あるいはそこでなら暴れることができた、ということだったようです。

 そしておもしろいのはここからで、ちょうどその癒着のできている辺りの歯並びが私は極端に凸凹なのです。
 身体が、全体で相互作用を与え合っているものだとするなら、歯の外側を覆う口周りの筋力の不均衡が歯並びに影響することもありそうです。とすると、不均衡がうまく均せたなら、長い時間は掛かるにせよ、歯並びもいくらかマシになるかもしれません。歯列矯正の針金の代わりを顔の筋肉がするイメージ――というか、天然で歯並びの良い人はそもそも自前の筋肉が自然に歯列矯正をしているのだろう、という理解です。
 私の場合、乳歯時代の歯並びがどうだったか憶えていませんからはっきりしたことはわかりませんが、少なくとも、口周りの筋力不均衡は永久歯が生えそろう前にできていた可能性が高い。ケガの記憶はないけれど、はてはて、むかしの私はどんなケガをしたのだろう……?
 そんなことを考えていた数日後、たまたま行った歯医者さんで歯科衛生士さんと話していたら、ふと、「歯並びは一度できたら動かないものじゃなくて、顔の筋肉の加減とか舌からの押され具合で、常に動いているものですよ」と言われ、大興奮。やっぱりそうでしょ!? いよいよおもしろくなってきた、期待しているのです。

 ツマランことですが、口周りの癒着を剥がしたら〈作り笑い〉ができるようになりました。これまで私は〈顔の他の部分を動かさずに口角だけキュッと上げる〉表情ができなかったのですが、ちょっとできるようになってきました。……まあ、鏡で見ていて我ながら気持ち悪い顔なので積極的にしようとは思いませんが、使えなかった筋肉が使えるようになったことで、顔全体の筋力バランスは変わることになるでしょう。そこは嬉しい。ついでに、そうして口周りの血流が良くなって冬場の乾燥がなくなってくれたらなお嬉しい。
 瘢痕組織の見た目は、まだ変わっていません。皮膚のこわばった感じはなくなりましたが瘢痕特有の艶というか照りはまだ減っていません。こちらは、組織が置き換わるまでに少し時間が掛かります。


220318 不眠と咳と整体

 「寝つきが悪くて睡眠導入剤を飲んでいるけれど、できればやめたいと思っている」と、来院2回目のお客さん(=Pさん)から言われました。もともとの主訴は咳が止まらないことだったので、「え? 不眠も言ってらしたっけ?」質問票をめくりましたが書かれていません。初回は言ってなかったけれど、そういえばこれも……と追加で挙げられた症状でした。

 咳も不眠も、原因がいろいろ考えられる症状です。筋肉でも神経でも精神的ストレスでも起こります。Pさんの背中はガチガチに凝っているので、筋肉が原因の可能性は高そうです。でも、それだけとは限りません。あれもこれも、の可能性もあります。
 「ストレスは?」訊くと「とくにない」とのこと。筋肉だけが原因なら良いけどなあ……期待しながら検査を始めると、左の肘からはっきりした癒着が見つかりました。これは前回の施術では見つからなかったものです。ちくちく施術して、ケガの範囲・状況が大まかに想像できたところで「肘のケガに心当たりは?」訊くと、「そういえば……」そりに乗っていて転げて、アイスバーンで強打したことがある、とのことでした。

 氷より柔らかそうな雪の上であっても、転倒で受ける衝撃は想像以上に大きいようです。スノーボードで何度も後ろ向きに倒れているという別のかたも、私が呆然となるくらい、広範囲に深刻な癒着ができていました。
 Pさんの場合は肘の強打はそのときだけだったようですので、比較的作業は単純です。肘の癒着をごりごり剥がしてから背中の凝りを調べると、ずいぶん柔らかく穏やかな雰囲気になっていました。

 極端に背中が凝ると、横隔膜のはたらきも肋骨の動きも悪くなりますから、呼吸が浅くなります。膜といっても実際は筋肉な横隔膜は、筋力が弱ると息が吸いにくくなり、凝ると息が吐きにくくなります。
 Pさんの場合は凝りのほうで、吐き切れない気持ち悪さを咳にして、全身で息を出し切ろうとするのかもしれません。

 原因が筋肉だけであったなら、咳と不眠は足並みをそろえて改善していくはずですので、どんなふうに症状が改善していくか・どのタイミングで症状が出現するか、様子を見てもらうようお願いしました。


ページ先頭へ