のぞみ整体院
(完全予約制)072-250-5570

整体・身体観 27

190812 イライラした子どもの背中のこり

 小学校中学年の孫(Pさん)の言動のキツさが心配で……、と祖母に当たるかた(Qさん)がお孫さんを連れてこられました。
 その以前から施術を受けてくださっていて楽になられたQさんが、Pも、実は身体がしんどくて余計にイライラしているのかもしれない、と考えられてのことでした。

 以前に一度Qさんと一緒に店に来られたことはあったものの、Pさんが施術を受けるのはその日が初めて。やたらめったらビビった気配でベッドに寝転がられました。が、何気なく触ると、背中ががちがちに硬い。緊張ではなく、大人顔負けの凝りっぷりのために、です。
 イライラの全部が身体のせいかはわからないけれど、まったく無関係でもなさそうだ。肚を決めて、施術を始めました。

 Pさんは、整体屋的になかなか嫌な種類のケガを一つ、二つされていますので、まずはそこからせっせと施術。何をされるのかしらとビビっているPさんは、実におとなしい。
 終わりの時間が近づいて、仕事をまとめ上げて「ハイ、終わり」というと、ようやく気がゆるんだかして、早速Qさんにぎゃいぎゃい言いかけていましたが、前回拝見したほどのキツさはないような……。ははは、ビビりすぎて疲れたのかも。

 別れ際、Qさんに、「施術はうまくいったと思いますから、ああしんどい!という感じがきつくなければしばらく来てもらわなくて大丈夫です」とお伝えしていると、「また来ようか」とPさん。「いや、用がなければ来てもらわんでええよ」と私が言うと、ちょっと拍子抜けの風情で「ふうん」。
 ビビっていたほどは怖くなかったということでしょう。安心してお別れしました。


 後日、ご自分の施術にお一人で来られたQさんにPさんの状況をお聞きすると、「目が優しくなったとPの父が言っていました」。これは嬉しい。きっと、しばらくお会いすることなく、ご機嫌で過ごせるでしょう。


190826 股関節の施術途中

 先日の太極拳教室ではまた、スパルタ師匠の先輩(=P先輩)にしごかれてきました。

 実はしばらく前から私は自分の右股関節を立て直しにかかっていまして、おしりやら脇腹やら背中やら、これまであまり施術できたことのないところを大掛かりにいじっていました。そのおかげで、立ち方・歩き方に実感できる変化は出てきたものの、なんとも中途半端なところで施術に行き詰ってしまって、良くなりつつある気配はあるけれど、このままではギクシャクして、どうにも動きにくい状態になりました。
 これじゃあ困るなあ……、と思っていた矢先に、図らずも、P先輩が助け舟を出してくださったのでした。

 その日、練習した型には、〈真ん中付近にある重心をちょいと左に移す〉動作が含まれます。私はこの手の動きがどうにもピタッと決まりません。うんうんひとりで呻りながら反復練習していると、「なんや、悩んでるなあ!」とP先輩。
 「全然わかりませんわ」と見ていただくと、「ここや、膝が入ってるわ」と右膝を指摘。それからは延々、「もっとここを開かないと」「もっと背中を立てて」「ほら、おしりを沈めないと」と、あっちを動かしたらこっちを注意、こっちを直したらそっちがダメよ、のモグラ叩きで、「ああ、もう、私の身体に全部完璧は無理ですわ!」と投げ出すと、「そこを練習するのが練習よ!」といかにもまっとうな〈常識〉で反撃されました。で、えーいとなって、「私は練習はしません、身体を修理してできるようにしてきます!」「じゃあちゃんと修理しておいで!」。笑いながらの売り言葉に買い言葉で、つい、大風呂敷を広げました……。

 自転車での帰り道、来週までに直せるかしらと思っていたら、教室での無理がすぐに効いてきて、右膝が痛くなってきました。これはいけません、直せるかしらじゃなくて直さなきゃ、です。
 帰宅してから検査をすると、緻密なスパルタ指導をくださったおかげで、右膝の内側、縫工筋の付着部周囲から癒着が見つかりました。

 私は赤ちゃんの頃にベビーベッドから落ちて右半身を打っています。その影響が、おしりやら脇腹やら背中やらにできた癒着なわけですが、おしりを打った瞬間、足をねじりでもしたのでしょう、縫工筋は太ももを外に回す(外旋)筋肉です。
 で、そう考えた瞬間、「縫工筋だったのか!」。ようやく謎が解けました。
 太極拳を始めた10余年前、初代お師匠に習い始めた当初から右膝の動きが悪いことは指摘されていました。その原因を、私はおしりの筋肉に癒着ができて弱くなっているせいだと思っていましたが、縫工筋も弱かったのか……。そう理解するときれいに辻褄が合います。

 謎は、解けました。が、施術はまだイマイチ完成に至りません。右の股関節が、立ち座りでギギギギっとなる、歩くとまだギクシャクする、三角座りをすると曲げた右股関節が伸ばせない、かなり不自由です。がしかし、いままで無自覚に縮こまっていた右足が、伸びよう伸びよう、力を出そうと踏ん張りたがっている気配も感じます。
 太極拳教室は、今週は雨のために休みましたが、来週こそは、P先輩に「ほら、どうよ!」と言いたいところです。なのにこんなギクシャク状態ではすたすた歩くことさえ覚束ない。作業を急がねば……です。


190818 バース・トラウマと寝返り

 前回の記事で、私が「赤ちゃんの頃に寝返りを打ってベビーベッドから落ちた」ことを書きましたが、私は生まれるときにへその緒を首に巻いて出てきました。つまり整体屋ふうに言うと、生まれたときから、首にゆがみがありました。もちろん、この仕事を自分でするようになるまで、そんなこと気にも・気づきもしていませんでしたが。

 首に限らず、背骨にゆがみがあるとまっすぐ寝転んでいるのが落ち着きません。頭をまっすぐにするとおしりがずれるし、おしりをまっすぐにすると頭がずれる。寝心地が安定しないから、ゴロゴロ動きたくなるというか動かずにはおられない……。赤ちゃん・大人を問わず、枕が悪いとかベッドが合わないとか、よりひどくなると睡眠が不調だとか眠りの質が低下して寝ても疲れが取れないとかいうのの原因には、背骨のゆがみが関係している場合があります。

 で、赤ちゃんの私も落ち着かなかったのでしょう、まだ大丈夫と油断していた母の目を盗むように異例の早さで寝返りを打って、ベッドから落ちました。
 お客さんの中にも、やたらに寝返りが早かったといわれるかたがいて、このかたの場合は股関節のトラブルじゃなかったかと理解して私は施術しています。

 出産時のトラブルをバース・トラウマと呼んだりするそうですが、それがあると寝返りとか歩行の開始のタイミングが〈標準〉から外れる、とかそんな傾向はないかしら、どなたか調べてないかしら、と、ちょっと興味は引かれながら、そんな調査があるか・ないか調べたことはありません。もう数年以上、調べてみたらおもしろいかもなあ、と思いつつ、ときどきお客さんと話題にしては、「そんなことがあるかもね、調べてないけど!」と笑うだけです。……実際に調べるのは邪魔くさいんでしょうね。


190912 股関節の施術・続き

 自分でしていた右股関節の施術は、ともかくも一山越えました。が、またすぐ次の山が来ましたので、結局はこの数週間ずっとギクシャク歩いています。

 大きな流れだけ記録しておくと、右股関節回りと右体側⇒右膝の内側(右縫工筋付着部)⇒右2趾(足の人さしゆび)⇒右脛の前面(ここが非常にひどいです)⇒右アキレス腱周囲⇒右脛の外側・ふくらはぎ、と来て、いまは左脛周辺と再び右アキレス腱辺りに施術が及んでいます。
 要は、ベビーベッドから落ちて傷めたことでできた右半身の癒着と、それをかばうために凝り続けてきたあちこちの筋肉を手探りでゆるめていっている状態です。

 施術が展開するたびに痛いところが変化したり動き方が変わったりと、いろいろおもしろい納得はありますが、もうそろそろ面倒くさくなってきました。もういい加減、続く山々を越え切って落ちつくべきところに落ちつきたい……。


 太極拳教室は、不安定な雨模様がようやく抜けたので、3週間ぶりに行ってきました。
 最後に習ったばかりの型は見事に忘れていて茫然自失。先輩に泣きつきまくって懇切丁寧に教えていただいて、やっとこさ動けるようになってみると、確かに以前よりはしっくり極まる手応えがありました。が、しっくり極まりきる瞬間、股関節にビリっと痛みが走って、あ、ヤバい……。
 股関節の動く範囲は広がったけれど、もうひと押ししっかり体重を乗せようとすると、それはまだムリ、な感じでした。この感じでは、少し筋トレ的な動きをすると、改善が速くなるのかもしれません。


191001 子どもの癇癪と身体の凝り

 ちょっと癇癪持ちなところがあって……と、数か月前に、祖母のかたに連れられて施術を受けに来られた小学生のお孫さん(Pさん)に、先日、再会する機会がありました。
 ぱっと会った瞬間の感じも、その後少しだけ交わしたやり取りの感じも、以前よりずいぶん穏やかな印象でした。照れ隠しもあるのかどうか、いくらかとんがった物言いは相変わらずでしたが音調のとげとげしさというか迫力はかなりなくなっていて、恐るべき〈癇癪持ち〉というより愛すべき〈悪ガキ〉の風情でした。
 別れ際、ほいじゃな、バイバイ、と背中越しにふらふら手を振るしぐさにも、「生意気な!」と思うより「おお、おお、イッパシな」と冷やかしの声援を投げたくなるような何かしらの余裕が感じられて、ほほえましい。

 また別の日には、就学前の子どもさん(Qさん)に施術させてもらう機会がありました。お父さんに連れられての来店です。Pさんと同じく、癇癪持ち、とのことでした。
 Pさん同様Qさんも、施術したのは1時間だけですが、以前より癇癪が減って穏やかになった、本人も身体が楽になったと言っている、と、後日、お父さんから聞きました。


 PさんとQさんは年齢も雰囲気も異なりますので、同じ〈癇癪持ち〉といってもその現われ方は違いそうなイメージです。
 ですが共通して言えるのは、お二人とも、子どもとは思えないくらい身体が強く緊張していたことです。ガチガチに、首や背中が凝っていました。

 〈ケガの痕に施術する〉技法に基づく私の見方では、お二人とも、ごく幼い頃のケガが原因で身体が凝っています。
 そしておそらくは癇癪も、身体がしんどいためだけでなく、ケガをしたときの恐怖や苦痛が蘇ることで反射的に出てしまう一種の〈発作〉、フラッシュバックに関係するのだろうと私は理解しています。そうであるなら、早い時期に改善できたことは本当によかったと思うし、子どもなりにいろいろしんどかったろうねえと想像もします。

 この技法を始めた当初は、癇癪に限らず、どんな症状でも整体で改善できるのではないかしら?くらいの大きな期待を抱いていましたが、やがて分別がついてくると、整体にできる範囲のことをできるだけの丁寧さでしていきたい、果たしてどれだけのことができるだろう?と探りながら進む行き方に変わってきました。
 その意味からも、PさんとQさんのようなしんどさが改善できたことは、ほっと、嬉しいです。


191007 便秘のお客さん

 ご年配のお客さん(Pさん)が便秘に困って、この春、整体に来られました。
 これまでに整体・鍼などの施術を受けたことはないそうで、初めて来院されたときは、見事なまでに肩も背中も首もがちがちでした。ケガ歴・手術歴はわりに少なくて、便秘のきっかけになったのは直近にされた数年前の手術だったようです。が、ここまでひどく凝るのには、もうひとつ何か、表面化していない原因がありそうです。

 そしてここまで広範囲に凝っている場合、症状が便秘だけ、ということもないだろうと思えます。安全策として、他にもごちゃごちゃしんどいところがありそうだ、と想像しておきます。
 そしてその場合、身体の凝りがゆるんでくると、そのごちゃごちゃしたしんどさが徐々にあるいは急激に自己主張を始めて、はっきりした症状として自覚できるようになることがあります。そのとき、お客さんと私の間に信用ができていないと、「整体を受けて悪くなった!」となりかねません。そう考えて、Pさんにも「いろいろ症状が出てくるかもしれません」「ご自分で思っておられるよりしんどい状態だと思います」と、前もっていろいろ説明して、心構えをお願いしました。

 「ああ、そうですか」「いろいろあるんでしょうな」。Pさんは私の話を淡々と受けられて、3週間ごとに淡々と来てくださいました。で、4回目の施術が終わって5回目の施術に来られたとき、便秘の処方がこれまでより弱い薬になったこと、白内障の検査結果がよかったため手術が遠のき、定期検査の間隔が間遠になったことを教えてくださいました。
 こちらの手応えとしては、首・肩・背中のこりがだいぶゆるんできて、表面化していなかった癒着は肩・肘のものだったらしい、の筋道がほぼ確実になっていました。Pさんの実感と整体屋の手応えの足並みが、いい具合にそろっている感じです。心配していた便秘以外の症状は、とくに報告されません。「白内障とか便秘とか、あちこちゆるんで、血流がよくなってきたんでしょうね」私が言うと、「はあ、血流ですかな」淡々とPさんが応えられました。

 8回目に来店されたときには、ずいぶんしっかり通じがつき始めたことを教えてくださって、こちらの感触でも筋肉は相応に柔らかくなっていて、ではこれを以て施術は終了としましょうか、となりました。
 始めた当初は結果が出るところまで続けて来てくださるかしらと思っていましたが、おかげさまで実に気持ちよく終えることができました。


191009 湿潤療法のありがたみ・その後

 9月27日にハサミで切った左手人差し指の傷(詳細はコチラは、10日ほどで無事完治いたしました。現状は、張ったばかりの薄い皮膚の奥に、血管にできたカサブタらしき茶色い細い線が見えているだけで、それ以外に傷だった名残りはありません。
 筋力検査で調べると、その茶色い線の周囲から小さい癒着がちょこっと見つかりましたので、それを細い竹串(エビ串)でちょちょちょいとほどいてみました。
 すると、その赤茶色の線が、薄れて見えなくなりました。

 さらにその2日後になると、やや薄かった皮膚も元通りになって、もはや傷痕とはわかりません。それでもじっくりじっくり見てみると、一回り小さいゴマ粒くらいの癒着が光の加減でキラッ、てらっ、と光るので、なるほど、ここにまだあるな。で、検査をして施術。
 おもしろいのは、見ているだけだと「もうこれくらい、放っておいても良いかな」と思える程度の小さな癒着なのに、いざ施術をしてみると、「ああ、確かにここは動かないな」と、独特の固まった手応えのあるのがわかることです。そして串で押さえると、その部分だけピンポイントで陥没します。癒着のところだけ皮膚が再生せず、内部が充実していないのでしょう。

 幸い、指先の小さな傷なので、筋肉的な影響は生じていません。傷のできたのが筋肉の近くだった場合には、はたらきの落ちた筋肉を身体が自然にかばいますので、周囲に症状が現れます。具体的に言うと、患部周囲や左右反対側の指や手首に筋肉痛のような痛みが出たり、やたらに肩が凝ったりというようなことです。今回はホントの指先でしたので、ほとんど影響しなかったのでしょう。
 また、心配していた脈診も、他の指同様にできていますので感覚についても大丈夫だったようです。やれやれ。ケガにはくれぐれも気を付けてね、とお客さんにいつも言うくせに、自分がしてたら話になりませんわ。


191018 大きな手術の傷痕への施術

 私の大事なお師匠さんズ(複数形)のお一人(P先生)がしばらく前にかなり大きな手術をされた、と聞いていましたので、その後処理を私に施術させてほしいなあと思っていました。
 期間的に見て、おそらく傷痕はもう落ち着いているはずですが、外からは見えない打ち身の傷などと違って手術の傷痕は表に見えています。そこを竹串でいじります、なんて言われて物騒に思わない人はいないでしょうから、果たしてP先生は施術させてくれるだろうか……。心配しながら電話しました。すると、「ああ、良いよ」。拍子抜けするほどあっさり、許可してくださいました。

 で、先日、P先生のところに押しかけてきました。
 どんな手術だったかは以前にお聞きしていたものの、傷痕を見せてもらうのは初めてです。見て、はあ……こりゃ、ナカナカすごいな……。
 わりと上手な盲腸の手術痕だったり内視鏡の差し込み口の傷痕だったりに施術していると、「手術の影響というのも、私が恐れるほど大きくはないのかもなあ」と思えたりしますが、がっつり・しっかりされた手術の傷痕を見ると、やっぱりこれは大変なことだ……と改めておののきます。

 ギシッというか、ゴツッというか、ともかくすごい密度で締まって固まった固まりが癒着の本体で、それをじりじりほどいていくわけです。
 失敗しますとかしませんとかでなく、ここは失敗できないぞ、のいつもの覚悟がいつもよりずっと強くなって、慎重な集中力みたいな何かがぐぐぐっと脳みその芯を圧倒してぱんぱんに膨れたみたいになって、そんな脳みそとはまったく別に、私の手指は手指で地道な作業を淡々とこなしてゆく……。このときの感じは自分が集中力の塊になったような感覚で、ああ、やっぱり私は職人だなあとしみじみ愉しい。

 ちまちま作業を続けていると、あっという間に1時間が経ちました。最初の施術としてはまあ上出来の部類だったでしょう。ごちごちに固まっていた癒着の感じがいくらかゆるんで、ほっと一息ついているような、少しふっくら、血流が通いはじめた雰囲気が漂っています。それを確認して、その日は終わりにしました。頃合いを見て、あと1、2時間ほど続きの作業を重ねれば、周囲の皮膚・筋肉の動きも血流もかなり楽になりそうです。
 P先生は初めての施術に、「楽になった」「オモロイ整体やな」と喜んでくださって、それが私はやたらに嬉しい。「でしょう! オモロイでしょう!」と、ご機嫌になった勢いで、出先なのに、見るからにまだ青いのに、ミカンを2盛も買いました。現在ぽつぽつ消費中です。


191108 右股関節のギクシャク感がなくなりました

 太極拳教室を退会しました。右股関節の具合はギクシャクしたままだし、教室に行っても「よし、習うぞ!」のわくわく感が湧いてこない。集中力も出なくなって、動いていてもつまらない。そんなナンダカンダで、目先を変えることにしました。

 太極拳とかフラ(ダンス)の丁寧な動きを〈質〉の動きだとするなら、ただひたすら自転車をこぐとかいうのは〈量〉の動きです。
 股関節周囲の施術は、作業としてはそれなりにできているのに、さらなる進展が生じません。これはもしかすると、〈質〉より〈量〉の動きがいまは必要だからじゃないかしら。そう推測してみました。

 で、先日、3〜4時間ほど歩いてみました。ふだんからの積み重ねなくいきなり長時間歩いたので、帰る頃には心底くたびれてうんざり、足元はガタガタしてどうにも危ない。ともかく転ばずに家までたどり着いて、早速検査をすると右足首から癒着が見つかりました。どうやら足首の輪状靭帯です。
 その後、夜寝ていると、夜中にふと目が覚めたので、また検査して、右の骨盤外側から膝外側にかけて施術。寝ぼけながらも、大腿筋膜張筋、と確認。
 翌朝起きると、まだ筋肉痛は残っていました。というかむしろ歩いた当日よりガタピシしています。ああ、もう、カナワンな……と検査すると、大腿筋膜張筋のほうの施術はうまくいっていて、残っているのは右足首輪状靭帯関連の癒着です。なるほど。それでその日一日、気が向くに任せて続きの施術をちょこちょこしました。

 でその翌日になると、筋肉痛はほとんどなくなり、以前からあった股関節のギクシャクした感じもなくなっていました。……ああ、よかった。

 ここまでの施術を振り返ると、股関節のギクシャク感は、赤ちゃんの頃に転落・打撲して右大腿筋膜張筋を傷めたことが最初の原因で、そのために股関節が不安定になった。それを無意識にかばって活動するうちに、右足首輪状靭帯に負担がかかり、やがてはそこにも癒着ができた、ということかなと想像します。
 股関節外側が不安定になると歩き方が粗雑になって接地が乱暴になりますので、おそらくはその衝撃に足首が負けたのでしょう。もちろん足首のねんざの危険性だって大きくなりますし、実際子どもの頃にはちょいちょい足首をくじいていた記憶があります。
 専門学校時代、同級生から「白柳は右足が短い」「歩き方がおかしい」と言われることがありましたが、なるほど、これがそうだったかと納得しました。

 それにしても、右股関節のギクシャク感は長引きました。途中ずっと、あれこれ施術はしていましたが、結局はちっともなくせなかった。それが、歩きまくって輪状靭帯に施術できた翌日に、すとんとなくなりました。
 これをもって、一連の症状・作業を「そうか、輪状靭帯だったか!」と結論付けると、それ以前の施術の積み上げを無視することになって、学びとしては得るものが少ない。傷めていたのが輪状靭帯だけだったなら、同じ状態にはなっていなかったはずなので、作業の全体を振り返ることが大事です。
 と、カッコいいことを言いながら、自分の施術はちっともメモせず手当たり次第にしていたので、作業の全体なんて、早くも忘れた……。やれやれ、もったいないことをしました。


191111 骨折治療中の患部への施術

 長らくのお客さんであるQさんの紹介で、骨折治療中のPさんが来院されました。骨折してまだそれほど間がなく、患部には固定具が入っている、とのことです。

 ケガの後・手術の後のリハビリに私の施術は有効なことが多く、これまでにも「動きやすくなった」「リハビリがさくさく進展するようになった」と言われてきました。理屈の上でもそうなるだろうと思っていますので、「よし!」と引き受けた仕事に関しては、施術の結果を心配することはありません。
 しかしその例外に当たるのが、骨折治療中、しかも固定具が入ったまま、での施術です。

 骨折すると、必ず、その周囲の筋肉も傷つきます。筋肉は骨を引っ張るものですが、傷ついた筋肉は骨を引く力が弱くなります。一方、傷の少ない・傷つかずに済んだ筋肉は通常通りの力で骨を引っ張りますので、結果的に骨は、あっちからとこっちから、均等でない力で引っ張られることになります。そうなると、骨にかかる力が偏って固定具との間で軋みが生じる可能性が出てきます。これが、私は怖いのです。

 骨というのはしょっちゅう作り替えをしている組織ですので、固定具がなければそれほど心配はしません。急激な力をムチャにかけさえしなければ、適当に筋肉と折り合いながら強度を増していくだろう。そう思えます。けれど固定具は骨の作り替え・筋肉の折り合いとは無関係に硬いままなものですから、私の施術がどう影響するかわかりません。
 だからともかく、害のないように害のないように、極力状態を変化させないように気をつけながら、しかもまんべんなく辺り一帯をゆるめるつもりで施術することになります。


 Pさんの説明では、主治医がかなりマメに診察し、リハビリも丁寧にされているとのことなので、異変があればすぐ対処してくれるだろうと想像しました。その確認をした上で、今回私がする施術はごく短期間(2〜3回程度)に留め、続きは固定具を除去してからにさせてほしいと伝えました。固定具を除去した後の施術のほうが、確実に大掛かりになるからです。
 私の説明にPさんは了解され、施術を終え、次は2週間以内に来てください、と別れました。

 大丈夫だったかなあ、とハラハラしながら過ごすものの、Pさんは来られません。2週間以内と言ったからな、と思って待つものの、まだ来られない。何か不都合でもあったのだろうか……いよいよ心配になってきた2週間目のその日に、偶然、紹介くださったQさんが来院されました。
 「Pさんの具合はご存知ですか?」勢い込んで訊くと、「ずいぶん楽になったと言ってましたよ。動きの範囲も大きくなっていましたし」とQさん。……よかった! とりあえずよかった。ひとまずほっとはしたものの、2週間以内の約束が守れないお客さんに慎重な施術をしていくのは怖い。今後も仕事を引き受けるかどうかは再会の日に相談するとして、とりあえず問題がなかったのなら安心しました。良き日に来てくださったQさんに大感謝でした。


ページ先頭へ