のぞみ整体院
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整体・身体観 26

190311 姿勢と耳のはたらき

 70代のかた(=Pさん)から「立ち止まるときと動き始めのときどきに、突っかかる感じのすることがある」と聞きました。ときどきってどれくらいの頻度ですか?とか訊いてはみますが、こちらに〈ははあ、これはあの筋肉の問題だな〉というような馴染んだ感触が湧いてきません。うーん、これは筋肉の問題なのかなあ……?
 そこで、「私ではなんだかよくわからないので、お医者さんに相談してみてください」とお願いしました。

 歩き始めと歩き終わりに突っかかる、と聞いて心配するのはパーキンソン病です。でもPさんのお話からは〈あ、これはパーキンソン病かも〉という感じも湧いてきません。
 〈パーキンソン病のごく初期の症状ってこんなのなのかなあ……?〉という不安感だけはあって、でもそこは私は医者じゃないですからはっきりしたことがわからない。専門外だから仕方ないこととはいえ、頼りないことです。

 で、Pさんはかかりつけ医を受診してくださることになりました。
 Pさんのかかりつけ医は内科のQ先生。私も存じ上げている大好きなお医者さんです。ひょうひょうとしたお人柄で、不要な検査を勧めたりもされません。「こんなことがあるんです」と相談したら、きっと、さらっと適切な判断をしてくださるだろう。

 それで、後日。Pさんから「結果報告」をお聞きしました。
 Q先生のおっしゃるには、「たぶん耳が年を取ったのだろう。姿勢を調整するはたらきが鈍くなった結果、急な動きに対処しにくくなっているだけだろうから、とくに治療の必要はないし、ぼちぼちやっていきなさい」と、そんなことだったそうです。

 そのお話をお聞きして、私は目からうろこ!でした。なるほど、耳か!
 耳が姿勢の調整に関係しているのは基本的な生理学で、年とともにそのはたらきになんらかの衰えが出るのも自然なことです。
 35歳を過ぎた人から「このごろ目が見えにくくなって」と聞けばすぐに老眼を想像するのに、70代の人から「姿勢がピタッと決まらない」と聞いて「老耳」が想像できないとは……。明らかな私の想像力不足です。
 ああ、やっぱり、解剖学と生理学を復習しよう、しっかり復習しよう! Pさんのためより、私のためになったQ先生のご診断でした。


190423 子どものお客さん

 数年前、まだ赤ちゃんだったときに来てくださったお客さん(Pちゃん)が、〈児童〉にお育ちになって、先日また、施術を受けに来てくださいました。

 前回同様、一緒にご来店のお母さんは、「前のときはとにかく泣いて大変でしたが、いまなら落ちついて施術を受けられるかもと思いまして」とにっこり。そうでしたっけ、と記録を見ると、たしかにそんなことが書かれています。お母さんには途中で授乳までしてもらっているようなので、赤ちゃんなPちゃん含め、周囲の人間もそろって大汗を書いていたのだなと可笑しくなりました。

 赤ちゃんへの整体は、予約の枠である1時間の間に3か所、手応えのあるポイントに施術できるかどうかが勝負だと私は思っています。1時間かけて数回しか接触できる機会がなかったとしても、ここぞというところを逃さず施術できていれば赤ちゃんの顔色はよくなります。ぱあっと明るく艶が増します。
 Pちゃんの記録にも、「顔色がよくなったので良しか。でも授乳のおかげかも?」とあります。授乳+大汗、あるいは授乳のみ、の苦労が実ったのでしょう。個人的には大汗の効果もあったことを望みますが。

 今回の、児童なPちゃんは終始ご機嫌で施術させてくれました。骨の成長・筋肉の成長に伴って潜在していた問題が表面化してき、施術できる部分が増えますので、赤ちゃんのときにはできなかった下肢にいい施術ができました。
 顔色もよくなって、良し、です。「スキッとした?」と訊くと眠たそうに「うん」。「施術していて、肩こりだなあ、という感じでしたから、いいときに来てくださったと思います」とお母さんに言うと、ほっとしたご様子でした。

 相手が大人でも子どもでも、施術をしての感触をもとに「すごい肩こりですよ」と施術者のほうから感想を述べることがありますが、小さい頃から肩がこっている人は大抵、肩こりの自覚がありません。「私の肩は、むかしからずっとこんなものだ」と思っているので〈肩こり〉を知らないのです。
 〈いつでもずっと肩こり〉の状態が解消されて「ああ、これがこりのない肩か」が実感できて初めて、肩こってきたわ〜、となる。なのでPちゃんも、肩こってきたわ〜がわかる大人になるだろうか、なってくれよ、というのが整体屋の愉しみです。


190505 耳の変調を観察する

 いつの頃からか、私の右耳には耳鳴りがしていました。夜眠る前の静かな時間とか、日中でも右耳に注意を向けたときには、ピーとかンーとかいうような、独特の高音が響いている。この感じはわりと子どものころからあったので、とりたてて異様には思わず、また聴力に不便を感じてもいませんでしたので、親に訴えることもしませんでした。子ども心に、「いま聴力検査をされたら、自前のピーと検査のピーが聞き分けられなくて困るかもしれない」と心配してはいましたが、実際に困った記憶はありませんから、耳鳴りがし始めて以降に検査は受けていないのかもしれません。

 で、長年安定して鳴り続けていた右耳の耳鳴りですが、異変が起こりました。
 1、2か月前、突然、左耳に猛烈な耳鳴り、というか騒音が生じるようになったのです。左で聞こえるのは、フォーン、フォーン、という周期的な音で、ちょうど昔のアメリカドラマ『ナイトライダー』に出てくる超高機能車「キット」の動作音(?)そのままで、突然の異変にびっくりはしたけれど妙に懐かしい、変な気分でした。

 右耳のピー・ンーはごく小さな〈音〉ですが、左耳のフォーンフォーンは〈振動〉に近い圧迫感で、けっこう怖い。これは放置していてはまずいんじゃないか、の不安が湧いてきます。そしてそれ以前に音量が大きいので気になって眠りにくい。ああ、もう、うるさいなあ、とイライラしてくる感じです。

 とりあえず耳鼻科に行くことを一瞬考えて、でも問診であれこれ聞かれて答えなきゃならんと思うと面倒になって(自分はいつもあれこれ訊くくせに)、ちょっと自分で何とかしてみようか、と、この2週間内外の変わった出来事を思い返してみました。が、あんまりピンときません。
 仕方がないので、睡眠不足か最近した自分整体を原因だと仮定して、ちょっと真面目によく寝ることと、ちゃんと気合を入れて自分整体をすることとを心がけてみました。

 自分整体は、テレビを見ながらとか本読みながらとか、いたって雑にしています。片手間にしかしないから、作業が中途半端になっているのかも、と考えて、当時していた左の太ももと左顎の施術を丁寧にしてみました。ついでに、気になったところも普段になく丁寧に。

 一応早寝も目指しつつ施術もせっせとしてみましたが、フォーンフォーンは消えません。いよいよ耳鼻科か、と思いかけたときに、補聴器について書かれた新聞記事を読みました。記事はもう手元にありませんので記憶で書くと、〈補聴器を使おうと思う頃にはすでに聴力は低下している。つまりこの時点で脳は静寂に慣れている。補聴器をつけて周りの音が聞こえるようになると、それは非常な騒音だ。その騒音状態に脳が慣れて、処理の仕方を変えるまでには、いくらか時間がかかる。だから、補聴器というものは、イヤでもしばらく使い続けて、脳を騒音状態に慣れさせなければならない〉みたいな説明でした。

 これが、実によく腑に落ちました。私がそれまで聞き知っていたのは〈自前の耳は大事な音・不要な音を聞き分けて選択的に聞くけれど、補聴器は全部の音を拡大して聞かせるから使用者はしんどい〉という説明でした。
 それを聞いたときには、ふーん、そんなものか、と思っていましたが、大事・不要を聞き分けるのは脳のはたらきで、耳自体にその機能はない、と考えるほうが自然です。

 新聞を読んで、なるほど!となって、今後私が補聴器を使うことになったらこの記事のことを思い出そう、そしてがんばって脳を慣れさせよう、と思い決めながら、あ、と思いました。
 私の左耳のフォーンフォーンも、これかもしれない。いままではたらきの悪かった左耳がはたらくようになって、脳の血流の音を聞きとるようになったのかもしれない。その音に、脳が慣れていないだけかもしれない。そんな思いつきが湧きました。

 じゃあ、しばらく放っておいてみよう。左耳から入る血流の音に脳が慣れたら、フォーンフォーンもなくなるかもしれない。
 耳鼻科?耳鼻科?のハラハラ状態から一転して、ゆったり気分で様子を見ていると、10日ほどでフォーンフォーンは小さくなって、2週間後にはすっかり消えました。ここから推測するに、脳の慣れには2週間近くかかる、ということでしょうか。
 そしてめでたいことに、長年の友・右耳の耳鳴りもいまはなくなっています。両耳のバランスがよくなっての完全消失か、新たな状態に脳が慣れるまでの過渡的消失か、そこは現在観察中です。せっかくなので、右耳にある聴覚過敏もついでになくなったかどうか確かめたいのですが、さて、どうやって確かめたらいいものか。……クラシックのコンサートでも聴きに行くか。


190515 痛みとの付きあい方

 痛みを抑える・散らす・紛らすことで〈よくなった〉気分を得て自由にのびのび患部を動かすことには、危険が伴います。先日来られたお客さんは、気功の先生に痛みを散らしてもらった後、久しぶりに楽に動けるのが嬉しくて、たくさん動いた、と話しておられました。
 その後、このかたの症状が悪化したのが、そのためだけだったかはわかりません。ですが、一般的に、痛みは、「この動かし方は危険だ」という身体からのサインであることが多いです。傷を広げる動き・状態を悪化させる動きをしたときに、痛みは強まる。だからこそ、他の向きになら動かしても痛くないのに、この向きに動かすと激痛が走る、といったことが起こります。

 で、ここで言いたいのは、痛みはサインなのだから、痛み止めは使うな、ひたすらこらえろ、ではありません。痛みを抑える前に、せめて〈どの方向に動かすと痛いか〉〈どう動くと痛みがマシか〉を確認しておくと良いと思うのです。で、痛み止めを使った後も、その確認事項をもとに、大事に動く。
 そうすれば、痛みをあまり感じずに活動できて、しかも、極力悪化させずに済むのでないかしらと期待します。

 この仕事を始めてすぐの頃の私は、触ればたちまち痛みが消せる魔法のような施術の使い手になりたいと憧れていました。が、ある時期からは、あんまり急速に改善させる種類の技術は、長い目で見ると身体に良いばっかりでもないのだな、と実感するようになりました。
 私が施術していて感じるのは、痛み・症状の様子がシンプルで、ぱっと改善できるものもあるにはある。でも、それなりに複雑・深刻なものになれば、必ず、それなりに時間がかかる。でも、〈傷めたものが、治っていく〉はたらきを思うと、それが自然なのだろうなということです。その意味で、あんまり見事に痛みを消すのは、いくらか、両刃の剣的と思っておくほうが安全に思います。


190521 精神療法と風邪引き

 精神科医のお師匠さんにお会いした翌日から、風邪を引きました。バイ菌に負けたせいで、というより、体調の勘が狂って自滅するように風邪を引いた、の感じです。

 このお師匠さんにお会いすると無自覚のうちに影響を受けて体調を崩すことがある、というのは一部の人には有名で、私も、これまでにも経験があります。なので風邪を引いたくらいでは、いまさら驚きません。またか。またやられたか、な程度です。

 整体は、身体の状態を変化させますから、施術後に、だるくなったり筋肉痛が出たりすることがあります。変化させるのは身体で、〈症状〉が出るのも身体です。
 精神療法は変化させるのは精神なはずなのに、風邪を引いたり熱が出たりすることがある。これはおもしろいことです。価値観や考え方が変わると、身体ごと動揺するのだなあ、と感心します。

 なお、精神療法、といっても大した話はしていません。何ということのない雑談をしただけです。
 何ということのない話の中で、お師匠さんは私のちょっとしたこだわりに引っ掛かり、〈おや?〉と思うか思わないかの状態で、反射的に返事をされる。その返事の微妙な不自然さに今度は私が引っ掛かり、〈あれ?〉と思うか思わないかでまた反射的に返事を返す。
 話しているときはそれだけのことで、とくに問題なく別れます。で、たぶん、一人でぼんやりしているときなんかに、私の中の〈あれ?〉が無自覚に膨らんでいる。で、あ、そうかと自覚できた頃には頭のはたらきが何かしら変化していて、ついでに体調の勘まで狂って風邪を引く、というのが〈精神療法後の風邪引き〉の正体だろうと私は理解しています。

 このテの風邪がバイ菌のせいでない証拠は、しっかり寝ればすぐに治ることです。今回も、一日早寝をすることで風邪の症状は完治しました。しばらくはそれに続いて起こった鼻のぐずぐずが残りましたが、いまはそれも落ち着きました。
 ちなみに、整体の後のだるさ・筋肉痛も、一般的に回復が早いです。


190616 顎と喉の施術

 太極拳教室の先輩に、手の動きがとても優雅な先輩がおられます。先日、その先輩に教えを乞うていたら、「あんた、肩が詰まってるからあかんねん」とばっさり!
 太極拳を習い始めた10数年前から言われ続け、直せず、もはや誰にも言われなくなった基本中の基本を、改めてばっさり指摘されました。おお、久しぶりに言われたわ、と軽い感動を覚えつつ、「わかりました。肩ですね」と頭を下げてお礼を言いかけたら「ほんまにわかったんか〜?」とニヤッと笑顔でとどめの一言をぽいと投げられました……。

 ズバリ図星の一言が悔しかったのと、何か改善できそうな気配を感じたのとで、残りの時間はひたすら肩の位置に意識を集中して練習しました。肩の動きと連絡の切れている部分はどこだろう、と、あれこれ探しながら動いてみて。
 で、帰宅したら早速施術。

 教室で予測したところでは首の後ろにある癒着が問題かな、と思っていましたが、帰宅してからきちんと検査してみると、首の後ろではなく前でした。顎から喉にかけての深い癒着が問題だったようです。
 私は子どもの頃、自転車でカーブを曲がり損ねて電柱で顎を切るけがを二度しています。おそらくはその痕でしょう、納得しながら施術。

 顔から激突した場合、ほぼ確実に首にもむち打ち的癒着はできているはずです。顎・喉の作業が済んだら、首の後ろと背中に施術することになるだろう。首はともかく、背中はどうやって施術しようかな……。
 施術方法を思案しながら顎・喉の施術をしていたら、俄然、舌の筋トレを始めたくなりました。ちょうど、お気に入りのヨガの本(『麻生よう子のジョイフルヨーガ』)にそれらしいポーズがあることを知っていたので、とりあえずそれをちょいちょい試していると、せり上がり気味だった肩の後ろの筋肉(僧帽筋)が少し下がってきたかして、首の位置が落ちついてきました。
 これは良い! うまくいけば長年の猫背が軽快するかもしれません。しばらく経過を見てみたいと思います。


190702 指のねじれとその施術

 パソコンで少々マウス(といってもレノボのノートパソコンの赤ぽちですが)を使い過ぎたためか、右手首から腕にかけて軽い熱感が出てきました。ごくごく初期の腱鞘炎かもしれません。これはいけません。
 ということで、パソコンの使用はしばらく極力控えつつ、施術できそうなところを探すことにしました。腱鞘炎のような局部の炎症は、本格化してから解消させるのはけっこう難儀なので、「あれ? ちょっと使いすぎたかな?」くらいのところでさっさと対処するのが効果的です。検査をすると、左手親指の癒着が施術できそうとわかりました。

 しばらく前から私は喉の施術に取り掛かっていて、それに合わせて、それ以前から注目していた左すねの施術もより一層展開して、相乗効果で、身体の大きなねじれがゆるんできている実感はありました。
 それを一番感じるのは歩いているときで、足の踏み出しがゆったり大きくなっています。そして長時間歩いても疲れにくくなりました。なるほど、股関節から振り出して歩くとはこういうことか、と、いくらか納得。と同時に、まだ完全でない感じ、具体的には右股関節の窮屈な感じがまだ残っていることも感覚できています。

 そしてここへきて左手の親指に施術できるということは、太極拳を始めた10数年前から気づき、またその以前、専門学校時代に指圧めいたことをしていた頃にも指摘されていた〈指のねじれ〉が改善できるのかもしれません。
 ねじれのスタートが指であっても肩であっても、結局は腕全体がねじれます。その結果、太極拳では腕の動きがうまく極まらず、指圧では〈指押し〉と呼ばれる小手先だけの施術になります。いわゆる〈肩に力の入った状態〉で、背中から指先へと力がきれいに伝わらないのです。

 いま私がしている整体技法では指圧のような指の使い方はしませんので、指・腕のねじれによる影響は少なく済んでいます。ですが、指のねじれ、ひいては腕全体のねじれが改善すれば、整体・太極拳に限らず日常動作全般が変化するはずです。その変化がどう生じるかは、これからのお楽しみ。じっくり味わって観察していきます。


190707 関節ネズミの手術痕

 若い頃に右肘の関節ネズミの除去手術をされたことのあるお客さん(Pさん)に、施術させていただく機会がありました。自覚症状は首の付け根のがんこな違和感です。
 「指のねじれとその施術」にも書いたことですが、癒着は、指にあっても肩にあっても、腕全体がねじれます。当然それは、肘にあっても同じです。

 ただし癒着の範囲・深刻さによってねじれ方の程度は変わります。
 たとえば私の指にできた癒着はおそらくは突き指によるものです。一般的に、突き指・脱臼は、骨折ほどには大掛かりなケガでない割に、癒着のでき方は厄介です。折れ方がきれいでさえあれば案外あっさり改善できる骨折と違って、突き指・脱臼に由来する癒着はなんとなくずるずる手間がかかります。かかるけれど、骨には達していない軽さというか、浅さのようなものも感じます。良いたとえではないですが、お風呂の表面に浮かぶ湯垢を何回も何回もすくうような感じで、手間はかかるけれどねじれはそれほど深刻ではない。

 一方、関節ネズミの手術痕はどうだったかというと、これは大掛かりに大変でした。表面の湯垢どころではない、やっぱり骨に係わる手術だな、深いな、の感じです。

 関節ネズミは関節部分に起きる骨折で、その骨折片(骨のかけら)が関節の痛み・動作不良を招きます。ネズミの手術はその骨折片を取り除くものですから、当然、手術痕は深いです。傷痕にできる癒着も、皮膚・筋肉・関節におよびます。そして肘関節は3つの骨が係わる複雑な構造ですから、関節自体もややこしいし、影響の及ぶ範囲もややこしい。これで緩んだかな? ――まだか。これで完璧かな? ――まだか。アタマで立てた予測がボロボロ外れる、一筋縄ではいかない施術でした。誤解を恐れずに言えば、実におもしろかったです。

 Pさんの場合は、追突事故による癒着もできていました。
 もともと私は、追突事故のほうが原因で症状が出ていると思ったのです。しかしこちらの状態が改善しても、症状は、マシにはなるけれどもきれいには緩みませんでした。そこで、肘の傷痕もほどかなきゃダメだ、となりました。もちろん、追突事故の癒着はほどいた上で、の話です。
 それからは肘にも本格的に施術して、これでもか・これでもかの気分で腕全体の癒着をほどきまくって、先日ようやく、首の付け根の違和感がなくせました。

 「関節ネズミの手術ってすごいものですねー」と私が言うと、「なんせ35年前の手術ですからね。しかも私はプロ野球の選手ではなく、専門のお医者さんにしてもらった手術でもないですから」とPさん。……ナルホド。
 施術後、Pさんは、「これで緩んだ気がします」。私も、きっと緩んだ気がしてます。
 このまま凝りが緩んだまま過ごせそうなら、Pさんはこれで、めでたく整体卒業です。ダメなら、またそのときには来院願うことになりますが、かなり手応えは良かったので、おそらく卒業だろうと楽観的に信じています。


190713 左右の視力差についての腑に落ちる説明

 メガネを買い換えました。そのときお店で、私の腑に落ちる、大いに納得のいく話を聞かせていただいたので記録しておきます。

 私は左右の視力差が大きいです。右が悪くて、左が良い。この視力差は中学生で初めてメガネを作ったときからずっと変わらなくて、そのことが私には不思議でした。
 メガネを作り替えて、調整しても・調整しても右が悪くなっている。悪いままでいる。これは〈ついうっかり右が悪くなってしまった〉のではなく、〈身体があえて右を悪くしている〉のではないだろうか。左右がバランスを保ったまま、より右のほうが悪くなっていることに、何か意味があるのでないかしら?

 メガネを買うお店を替えるたびに、あるいは担当してくれる人が替わるたびに、「視力差はなぜできるのですか?」と訊き続けました。これまで何人のかたに訊いたかは記憶していませんが、定番の答えは「人それぞれ利き目があるから、その加減で」「目の使い方・身体の姿勢の癖で」。これが私にはわかったような・わからないような説明で、結局、納得できないからまた別の人に訊いてしまう。そんなことを繰り返していました。

 それが今回担当してくださったかたの説明は――、

 同じ視力の両目で見ると、映像が立体で見える。これは右目で見た像と左目で見た像とのずれを脳が重ね合わせているからで、このとき脳は、いくらか努力している。
 しかしあなたの脳にはこの努力がしんどいのでしょう。だから右目をわざと少しぼやかして、立体映像をいくらか犠牲にしてでも、脳の負担を軽くしている。左目の映像だけを優先的に処理することでしのいでいる。
 だからメガネを作るときでも、左右の視力をぴったり同じ程度にするのではなく、右目の視力を低目に作ると具合がいいのでしょう。


 聞いた瞬間、ああっ、そうかっ! 納得しました。

 このお店に来る前に通っていたお店では、「左右の視力差はそのままにして、両目の視力を同じだけ上げたメガネを作ってください」とお願いして店長を怒らせました。私に思いつくささやかな実験だったのですが、「こんな無茶なメガネはもう二度と作りませんからね! 悪くなっても自己責任ですからね!」の雰囲気で事実上出入り禁止状態になって困りました。
 数年前、初めて訪れたいまのお店では、そのメガネを「いま使っているメガネです」と見せて「なんじゃこれは!」とあきれられ、怒られ、そうして新たに作ってもらったメガネは実に快適でしたけれど左右差が生じる謎は謎のままでした……。
 それがようやく、霧が晴れました。中学時代からのもやもやですから、長くかかったものです。が、今回説明くださったかたに出会えなければ、確実にまだもやもやしてました。お会いできて、お話が聞けて、よかったです。


190726 身体が変わるとフォームは変わる

 先日、久しぶりに来られたお客さん(Pさん)の施術は、なかなかに劇的でおもしろかったです。

 Pさんの自覚症状は腰痛です。といっても四六時中痛いわけでなく、ゴルフをされると痛くなる。これはおそらく踏ん張って身体をひねる作業で腰に負担が集中するのだろうな、ということは以前から想像していて、その大きな原因は足首の癒着にある、と私は考えていました。
 Pさんは足首に大ケガをされています。それでその踏ん張りが弱いから、無意識に、無理やり腰でひねってしまうのだろう、と。
 だからPさんへの整体は、足首の施術がいちばんのテーマでした。まずはここをなんとかしなきゃ、と。

 その作業が終わり切らないうちに、もともと不定期に来られていたPさんの来店は間遠になって、久しぶりの施術になったのですが、検査をしてみると、足首の癒着はずいぶんよくなっておられました。なんだ、作業はまだ途中のつもりだったけれど、けっこう終わっていたのだな。そしてその代わりに大きな問題として浮上していたのが、顎のケガの痕、です。
 顎関節に癒着があると、必ず、首・背・頭に影響します。そして首・背・頭のこわばりは身体の動きを固くします。なるほど、今回の腰痛(以前とは痛む場所が少し変わっていた)は顎関節の癒着が原因だったのだな。

 納得してせっせせっせと癒着を剥がして、小さな山を越えたところで一度素振りをしていただきました。「どうですか?」「腰はマシです」。で、またせっせ施術して、もう一度素振り。先ほどより明らかにのびのび振れています。「いいですね」「はい」。さらにまた施術して素振りをしてもらうと、ゴルフをしない私にもはっきり〈良いフォーム〉になったことがわかりました。「いいですね!」「はい!」。

 一時間の施術時間中に、みるみるフォームが変化して、〈うまそう〉になられました。
 嬉しくなって、「いやー、身体が変わると、フォームって勝手に変わるものなんですよね!」と私が言うと、「整体院をやめてゴルフフォーム改造所とかにしたらどうですか?」とPさん。……そんな名前はイヤだけど(私は広く〈整体〉がしたい)、そう名乗りたいくらい鮮やかな変化でした。


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