のぞみ整体院
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整体・身体観 25

181122 声で身体を評価する

 整体をしていて「声」に注目する場合、というのがときどきあります。
 ここ最近に施術をお引き受けしているお客さんの例でいうと、歌を歌う人と、声がか細い人と、です。

 発声に関係する筋肉は、直接は声帯まわりにあるもので、ごくごく小さい筋肉の集まりです。
 しかしその小さい筋肉群のはたらきを改善するために、歌を歌う人であれば、いかに全身で声が作れるかに注目して、施術をするにあたっては、肺活量を左右する肋骨まわり、喉を支える肩、そして上半身全体を支える下半身の状態、を改善したいと狙います。つまり、のどから上半身、下半身へと筋肉をゆるめていこう、声帯のはたらきに共鳴する部分を広げよう、と考えます。
 一方、声がか細い人であれば、とりあえず肩・首・のどの緊張をゆるめたい、そのためにはどこをしっかりさせればいい?と、いきなり、全身の状態を視野に入れてかかることになります。これは、全身のどこかに癒着があって(たいていは複数の部位に、そこそこ深刻な癒着のできている場合が多いのですが)、その癒着(群)が声帯をのびのびはたらけなくさせているから、声が細くなっている、と考えてのことです。

 全身の状態を声で判断するという方法は、私は中国医学から学びました。といっても、いまの私の使い方は中国医学そのままではありません。ありませんが、声に注目することで、きわめて優れた指標をいただけました。
 一般的に、身体の状態――底力、という意味で全身が弱っているのは、声がか細い人のほうです。いわゆる虚弱体質、の状態になっていたりします。

 ただしこれは、自覚症状のしんどさとは必ずしも一致しません。これがまた興味深いところです。弱りすぎていて自分のしんどさに気づけない人はおられますし、全身で歌おうとする人は自分の身体を「大事な道具」とみなして心を配りますので、往々にして不調に敏感になられます。
 その意味で、声は、外からの評価方法でもあるわけです。


181201 運動不足を考えてみる

 運動不足解消についてお客さん(=Pさん)と話す機会がありました。
 話題になっていたのはPさんの運動不足をどう解消するか、で、Pさんは「筋トレをして基礎代謝を上げてみようかと思うんです」と話されました。それに対して私は、「有酸素運動で血流を改善させたほうがいい気がしますけど」と別路線を提案しました。Pさんの筋力量が現時点でとくに不足しているとは感じなかったからです。

 細かいことを言うと最後は個人差とか状況次第になりますから、あくまで一般論として言うと、「運動不足を筋トレで解消する」方式は慎重に扱ったほうがいい選択肢だと私は考えます。
 なぜなら、運動不足だな、と感じる状況がすでに、慢性的な疲労状態と裏表になっている可能性が高いからです。つまり、疲れていて動けない・動きたくない、と無意識裡に感じているからこそ動かない、そんな状態です。そしてそんな自分の状態を客観的に評価すると、「運動不足だな」になります。しかしこの状態で筋肉をつけようとすると、身体の負担が大きいばかりでなく、疲労は高いし、うっかりするとケガにつながりやすい。

 運動不足だな、動かなきゃいけないだろうな、と頭で焦っているときは、たいていの場合、確かに運動不足です。ただしこの場合の倦怠感っぽい焦りは、全身の慢性的な血行不良が背景にあることが多い。であれば、有効なのは、温泉、マッサージ、筋力への負荷の少ない有酸素運動。つまり、無理がない程度の散歩、自転車、水泳、掃除。せいぜいが、軽いジョギング、です。

 一方、筋トレが向いている状況では、運動への動機が異なります。すなわち、退屈、です。
 暇だな、もっとおもしろいことがしたいな、といくらかそわそわしていて、でも内実としては体力が伴っていない。だから好奇心が騒ぐほどには動けない。なので、退屈だからなにかしたいなあ、になります。この状況は、「活動意欲に対する体力不足」が背景にありますから、筋トレ=体力向上が有効です。

 と、そんなことを考えながらPさんにお訊きすると、Pさんは、べつに筋トレがしたいわけではなくて、基礎代謝が上がれば寝てても痩せるだろうから、とのこと。これははっきり、血行不良で疲れている証拠です。やっぱり、自転車とか散歩をお奨めしておきました。


181225 下唇左側のやけどと右腕のかぶれ

 熱々の揚げ物にかぶりついたら、油が垂れて、熱ッ! 下唇の左側をやけどしました。
 熱さの感じも相当でしたが、「熱いッ」と「痛いッ」の両方の感じが強かったので、範囲は狭いけれどそれなりのやけどだったかもしれないな、と覚悟しました(熱すぎるもの(45℃以上)に触ると、痛覚が反応します)

 なのに翌日、やけどしたらしき部分を鏡で見ても、傷がわかりません。おかしいなあ。
 そうこうするうち、右腕の内側、手首と肘の間の手首寄りの部分にぱっとかぶれが広がっているのに気づきました。かぶれるような何かに触った記憶はありません。うーん、これはもしかすると昨日のやけどの影響かも?

 その翌日になると、右腕のかぶれは跡形もなく消えていて、下唇にはかさぶたができていました。検査をすると反応が得られて、かさぶたの周囲に施術ができました。
 それきり、かぶれは出てきません。下唇のかさぶたは、その翌日、気づいたらきれいに剥がれて、なくなっていました。ケガの直後は免疫力が低下して風邪を引きやすくなったりしますが、それには至らず済みました。やれやれ、です。


181228 フラフープ練習中

 本の作業が一段落したら、私のことだ、暇だ暇だとうるさくなるに違いない、新しい暇つぶしを用意しておこう。そう思って物色して見つけたのがフラフープでした。
 じっと立ち続けるタントウ功に飽きるのなら、ひたすら動き続けるフラフープならどうだ!と、安直な選択です。

 実際に輪っかを入手したのは11月下旬です。インターネットで見ると、「重いほうが効果的」とあったり「軽いものでも回せるようになります」とあったり、よくわかりません。重いほうが筋力は付く/ダイエットになるけど、回すのは軽いほうが難しい、ということだろうか……?
 だいたい何グラムが初心者には手ごろなのかよくわからないまま、とりあえず近所のお店を数軒探し、見つからず、結局ネットで購入しました。散々調べた割には「でもまたすぐ飽きるんだろうな」の予測が勝って、ほどよく安いものを買いました。

 で、入手してからは地道に練習しています。これがなかなかおもしろい。
 小学生くらいの頃にしばらく遊んでいたことがあって、数年前にも一度、ちょっと試しています。そのときに、「子どもの頃のようには回せない!」と思い知りましたので、今回は最初から覚悟のうえで練習しています。
 朝起きてちょっと回してみて、できないからすぐやめる。寝る前にちょっと回してみて、できないからすぐやめる。そんな練習です。

 タントウ功(の基本(?)形)は、腸腰筋(ちょうようきん。おなかの中にある大きい筋肉)に最も負荷がかかる姿勢を維持して、いわゆるインナーマッスルを鍛えよう、という〈トレーニング〉です。右半身・左半身はおなじ姿勢で立ちます。
 一方、フラフープは、前後に足を開いて体重移動することで、左右の腸腰筋を交互に使います。この動きは、太極拳に近いといえます。タントウ功のような左右均等に体重をかける姿勢は、太極拳では使いません(少なくとも私が習った範囲では)
 そして私はまだ試していませんが、フラフープには、左右に体重移動する方式もあるそうです。この動きだと、フラ(ダンス)に近づきそうです。

 と、そんな理解は頭でできていても、輪っかはうまく回りません。おなかを前に出してみたり、よけいに腰を引いてみたりしても、ダメ。なんだろうなあ、と試行錯誤を続けていたら、ようやく、数日前から回せるようになってきました。
 ポイントは、上半身でした。猫背な背中を、普段よりはまっすぐになるように上方に引き上げて、その姿勢を維持するようにしたら回りはじめました。なるほど……の気分です。

 結局、背中が丸まることで、腸腰筋の体重移動が実現せず、足の筋肉で前後移動をつくっていたのだな、と納得しました。
 できるようになってみると、前後の体重移動といっても、身体はほとんど前後に動きません。実感としては、交互に足の裏を踏みしめているだけ、の感じです。そしてそれとともに、輪っかと胴体が押しあう感じが、自然に感覚できるようになってきました。

 インターネットによると、反対回し、というのもあるそうです。試してみたら、3回くらい失敗しただけですぐにできるようになりました。
 じゃあ次は左右移動で回せるかどうかだな、と企みつつも、同時に、そろそろフラフープに飽きそうな予感がしてきました。だって、ぐるぐる回している間は、ぐるぐる回し続けるだけで他のことがなにもできません。じっと立ってるだけも嫌だけど、ただぐるぐるしているだけもつまらない。またなにか別のことを探さねばなりません……。


 フラフープを始めてから、胃部というか腹筋に施術ができ始めました。きっと猫背に関係するのでしょう。いい収穫でした。


190112 筋力検査について

 昨日アマゾンを開いたら、『神田橋條治の精神科診察室』が精神医学部門のベストセラー1位になっていました!(といっても、1時間ごとに更新されるそうなので、そのとき限りの1位なのかもしれませんが^_^;)。これもお買い求めくださったみなさまのおかげです。どうもありがとうございます。

 さて、その『神田橋條治の精神科診察室』を読んでくださったかたから、「論理的によく書けている」「よくぞあそこまで食い下がった」とお褒め(?)の言葉をいただく一方、「それでもやっぱり〈邪気〉がわかりにくい」「筋力検査がわかりにくい」と言われることがありました。

 筋力検査は、乱暴に言うとリモコンとか冷蔵庫のような、〈仕組みはよくわからないけれど、使うと便利な道具〉みたいなものです。使っている私からすると特段神がかりでも神秘的でもなく、かといってまったくのでたらめでもなく、慎重かつ丁寧に使えば十分実用に足る――どころか、私のいまの技術には不可欠の検査方法です。
 普段から筋肉や神経がしていることの不思議さ・精密さを思うと、これくらいの検査は、そりゃあ成立するでしょうよ、と、整体屋としては思います。が、難儀なのは、その仕組みを厳密かつ理論的に説明できないことです。

 筋力検査がある程度以上、使えるようになると、いろいろ応用が利いてきます。神田橋先生が言われる〈邪気〉を見るのもその一種ですし、〈脳を見る〉もそうです。〈邪気〉も〈脳〉も、私が調べたい内容ではありませんから調べることはしませんが、それでも私が日常使っている検査の応用ですから、先生がしておられることは想像できます。

 要は、「筋力検査を使ってみてくださいよ、そうしたら感覚的にわかりますよ」ということなのですが、筋力検査は……どこで習えるのでしょうか。
 神田橋先生はたしか独学で練習したとおっしゃっていたように記憶します。私は、カイロプラクティック系(AK)のセミナーで学びました。もう一人使われるかたを知っていますが、あのかたはどこで学ばれたのでしょう? そういえば尋ねませんでした。

 入り口は、Oリングテストでも入江式でもAKでも構いません。使いこなせるようになれば、結局すること・できることは同じになります(ただし「なにを調べたいか」によって得意分野・不得意分野は出てきます)。むかし懐かしの「こっくりさん」とか「ダウジング」も、仕組みは同じと私は理解しています。ですがたぶん、検査にはちょっと使えないでしょう。
 検査手段として使うなら、薬を調べるには神田橋先生の仕方が、整体に使うには私の仕方が使いやすそう――と私は思っていますが、単純に慣れかもしれません。以前、思いつきで、薬の相性を調べる簡単な仕方を考案したことがありますが、私が薬を調べることはありませんので、使ったことはありません。でも検査の仕組みさえ理解しておけば、使い方はどうとでも展開できます。

 体得型の技術は、自転車と一緒で、乗れるようになれば、ただ、「乗れる」。それだけのことです。
 ですがその感じを言葉で説明してアタマで理解してもらっても、ちょっと方向が違うように思います。そこが説明に困るところです……。


190129 手の動きと冷え・その後

 左手親指の付け根の施術はその後、手のひら中央への施術に展開して、気がつけば、左手薬指のバネ指はおおむね解消していました。なにより、ぱっと手を開いて指をそらすと必ず起こっていた、薬指の異様な反りがほぼ消失しました。
 異様な反り、というのは、私が子どもの頃に名付けた名前でいうところの〈コブラ指〉です。いちばん先の関節が軽く屈曲気味になり、その次の関節が反りすぎる(これがコブラ(蛇)が鎌首をもたげた格好に似ている)。そしてその状態で固まった薬指を曲げようとすると、ごきっと引っかかる。でも痛みはありませんでした。

 物心がついたころから左手薬指はそんな状態で、その数年後には右手薬指もそんな状態になりました。それが、施術が済むと、左手ではその〈コブラ指〉が再現できなくなりました。
 そうなると、次の興味は「左手薬指が改善すれば、連鎖的に、右手薬指も改善するのだろうか?」。それで、右手はしばらく施術せずに、観察していました。が、どうやらこれは無理でした。少なくとも私のバネ指に関しては、左手は左手、右手は右手、のようです。

 そこで観察・放置はやめにして右手の施術にも取り掛かると、右手では、親指付け根の問題はほとんど見つかりませんでした。いきなり手のひらの施術から、です。
 どうやら、薬指のバネ指と直結していたのは、私の場合、手のひらの癒着だったようです。子どもの頃に転んで手を着いた、とかしてできた癒着かもしれませんが、「ああ、あのときの」と思い当たるような記憶はありません。まあ、ちょいちょいコケてはいたでしょうから、そのときのどれかでできたのでしょう。



 両手のひらの癒着がひととおり剥がせた後で、先日、太極拳教室がありました。
 そこで教わったのは「含胸抜背(がんきょうばっぱい)」と陳式の手の動きの関係でした。
 私が理解した範囲で内容を簡単にいうと、「肩関節を中間位に置こうとすると自然に含胸抜背になって、それを維持したまま腕を動かすと、自然に独特のひねりが生じる。それが陳式の手の動きです」。

 おそらくは以前にも聞き、本でも読み、知識としてはよく知っているその説明が、いまの私には大いに腑に落ちました。
 「ああ、それなら私でも、意識して練習すればできそうだ」の感覚。この感じの増えることが、私の考える「身体が、以前よりはよくなっている」証拠で、そしてまた私が目指す「整体」・「健康な身体」の肝です。

 とりあえず、いまの私が気をつけるべき太極拳の動作基準は定まりました。後は、その基準をどれだけ忠実に実際の動きに盛り込めるか、です。
 そしてあとひとつ、バネ指解消後に気づいたことを報告しておくと、左手のひらの癒着が剥がせたことで、整体の仕事がとてもしやすくなりました。親指と小指の安定感が格段に良くなったのです。これは拾い物でした。


190213 伸ばして傷める

 整体の仕事はしていますが、見るのもするのも、スポーツ全般にそれほど興味がありません。なので新聞のスポーツ欄はふだんからさらりと目を通す程度なのですが、昨日の夕刊、野球の松坂大輔投手が肩を傷めた記事には驚きました。ファンに引かれて、とは、なんとも殺生な……。

 それほど強い力でなくても「伸ばして傷める」というのはよくあるケガです。テレビで紹介していたストレッチを試した翌日に腰がつって動かないとか、背の高いお母さんと手をつないで長い距離を歩いた翌日、首が固まってしまった子どもとか。こういう、起こり方が単純なのは、回復させるのもそれほど難しくありません。
 それよりいくらか難しいのは、太極拳の組手練習などで、変な力の掛けられ方をして傷めた場合です。起こり方が複雑な分、回復させるのも少し手間がかかります。そしてさらにこういった場合に悲惨なのは、傷めるのは大抵、うまい側の人なことです。下手な側は存外平気なことが多い。おそらく身体がゆるんでいる分、うまい人の方が衝撃を受けやすいのでしょう。実際の格闘場面ではともかく、練習ではゆるんでいる方が不利だなんて、皮肉なことです。


 しばらく前から解剖学の教科書をせっせと読み続けています。暗記しようとは考えずに、身体の仕組みをフムフム読んで想像するだけ、試験は一切なしの条件で眺めていると、解剖学はとてもおもしろいです。上下水道、電気、ガス、通信網、ごみ処理場、すべて完備の一大都市をいっぺんに作り上げたような身体の仕組みの精巧さには、心底感激します。

 そこで思うのは、小中学校で「身体の時間」みたいな授業をしてはどうでしょう? ヒトの身体の取り扱い説明、の時間。これなら道徳より、少なくとも私は楽しんで受けられそうですし、生殖・発生の話も関連付けて話せそうです。
 関節の仕組みとか筋肉のはたらき方を知っておけば、伸ばしすぎて傷める、とかいうことは減るでしょうし、お医者さんの説明が理解しやすくなりますから、付きあい方もうまくなって、うまくすると医療費削減につながるかもしれません。

 私がカイロプラクティックの専門学校に入学したときは、ヒトの身体に筋肉ってものが「ある」ことは知っていましたが、それが「どんな風にある」のかはさっぱりわかっていませんでした。
 解剖学かなにかの授業で「筋肉(骨格筋)とは骨と骨をつなぐものです」と説明されて初めて、「ああ、筋肉ってそういうものだったのか!」と納得し、「でもつなぐってどうやって?」と疑問が湧き、「筋肉の端は骨に埋め込まれるようにして固定されています」と聞いて、「骨と筋肉のつなぎ目は一体化しているのか! ペタッと張り付いているわけじゃないんだ!」とびっくりしました。――25歳くらいのときでした。このびっくりは、もっと早い時期に味わっておいても、損ではなかったと思います。


190217 身体がよくなって腕前が上がる

 歌を歌われるPさんが、同じく〈歌仲間〉のQさんを紹介くださいました。

 しばらく前から来店くださっていたPさんは、ずいぶん身体の状態がよくなられました。歌を歌っていての感じも違う、とご自身でも自覚しておられましたので、ふと興味が湧いて、Qさんにお訊きしてみました、「Qさんからご覧になって、Pさんの歌は変わられましたか?」。
 すると、「全然違います!」と即答。この半年くらいで、以前よりのびのび、うまくなられたのがわかる、とのことでした。

 整体屋の大前提としては、歌は筋肉で歌うものです。それも声帯だけでなく、全身の筋肉が影響します。なので、筋肉のはたらきがよくなれば必ず歌は変わります。のびのび歌える、声がおおらかに響く、ゆったりした雰囲気が現われる、……。
 私が知りたかったのは、整体屋が確認し、Pさんご自身も自覚されているPさんの変化を、〈同業者〉であるQさんは気づいておられるだろうか? 気づけるものだろうか?でした。
 それが、Qさんは、非常に具体的にPさんの変化をつかんでおられました。なんとも嬉しいことです。

 だいたいにおいて私は、「整体を受けて元気になった」とお聞きするともちろん嬉しいのですが、「身体がよくなって、何かしらの技術の腕前が上がった」と言われると、なんだかもっと嬉しいのです。きっと、自分も職人だからこそ、身体の改善が技術に反映されることが、より嬉しく響くのだと思います。


190227 痛くても動かすこと、は正しい?

 運動中に膝をぶつけて、1週間ほどしたら余計に痛くなってきた、というお客さん(Pさん)が来られました。
 ぶつけたのは膝の正面で、いま触ると痛いのは膝の内側、ちょうど靭帯のある辺り、とのことでした。

 そう聞いて私が想像するのは、「ぶつけたことで膝正面の筋肉(大腿直筋)のはたらきが低下した。その負担は、太ももの両側の筋肉(外側広筋、内側広筋)が引き受けている。が、膝の安定は低下するので、そのしわ寄せは、(膝の内外の安定にはたらく)内側靭帯・外側靭帯にいっている。で、いまはとくにその内側靭帯が悲鳴を上げている」、そんな状況です。
 とすると、私のするべき仕事は、大腿直筋のはたらきを回復させることで、それがうまくいけば、靭帯の負担は勝手に減るだろう。そう予想して、施術を始めました。

 作業はおおむね予想通りに進み、途中何度か試しに立って動いてもらうと、「マシになっている」と改善を確認してくださいます。
 施術時間の終わりとともに作業のほうも区切りをつけて、「具合が良ければもう来てもらわなくても大丈夫、ダメならごめんなさいですがまたどうぞ」と挨拶を済ませてその日は終わりにしました。


 Pさんのことを記事にしたかったのは、「1週間ほどしたら余計に痛くなってきた」の部分が気になるからです。
 じつはこの間、Pさんはリハビリ的に膝を伸ばそうとされています。打ち身をして筋肉が縮こまっているからそれは伸ばしておいたほうがよい、という助言を受けてのことです。
 この手の助言はよく聞くもので、実際に動かしておられたお客さんを私は複数知っています。が、果たしてこれは〈正しい〉助言なのでしょうか? 私は大いに疑問に思います。

 私の経験上、ケガをして一度傷めた筋肉は、「動かしておく」ことで改善したりはしません。ですからむしろ痛みがあれば、「痛くないように動く」「できればなるべく動かさない」ことを心掛けるほうがよっぽど身体のためだと私は思います。
 痛む事情は異なりますが、五十肩でも、「固まらないように動かしたほうがいい」は定番の助言です。ですがこれも、どこまで本当なんだろう、と、私は効果を疑っています。
 それを調べる一つの方法は、自分が五十肩になったときに動かさずにおくことだ、――とは思いますが、私は整体屋なので、きっといじくってしまいます。どこにどう施術すればどこがどう変化するか、のほうが知りたいし、自分の身体はそのための絶好の実験台です。痛みに耐えてじっと観察しとくだけ、なんてもったいなくて私にはできません。

 もちろん、それ以前に、その人の身体はその人きりで、本来、比較対照はできませんから、厳密な意味では「予後の比較調査」は不可能です。「どちらの方法がよかったか」は、調べられない。
 でも、「痛くても動かそうとした」「打ち身が1週間後から余計に痛くなってきた」というPさんのようなお話を聞くと、「痛いときは動かさない」が正解なんじゃないかと思うのです。

 とりあえず一通りの施術が済んだPさんには、1〜2日様子を見たら、具合を見ながら徐々に運動を再開してみて、と言っておきました。少なくともそれで、私の施術の出来具合については答えが出ます。


190304 首の寝違えと腕の施術

 先日の太極拳教室では、腕の位置を注意されました。ふんわり丸い形で伸ばすべきところを、しゅっとまっすぐ伸ばしている、ということです。
 丸い形ってこうですか?としてみせると、そうそう、とオッケーをいただけたので、そのあと数回、自主練習的に、くりかえし動きを丁寧になぞりました。

 ――ら、案の定、その翌朝、首を軽く寝違えていました。「アタシの筋肉の状態では腕をまっすぐ伸ばすほうが自然なのに、丸い形で何度も動かそうとするから、こうなるんだよ」という身体の溜め息が聞こえてきそうでした。やれやれ。
 でも首が痛いのには閉口しますが、おかげで問題点はあぶりだせました。整体屋としては施術のしどき、いい流れです。

 で、首の痛さが軽快するかどうか様子を見ながら、施術を始めました。
 寝違えに限らずぎっくり腰やこむら返りでもそうですが、〈筋肉がビシッとつって痛くなる〉種類の症状は、〈痛みが起こってから改善を図る〉のは次善の策です。最善は、「あ、起こりそう」と予感した瞬間に身体をゆるめて、そもそもビシッとさせないことです。
 ビシッ、痛っ、いたたたた、という頃には炎症が起こり始めています。こうなってからだと、施術がうまくいっても痛みがすぐには取れません。血流が〈痛み物質〉を洗い流すための時間が少々かかりますので、1時間弱〜1、2日、痛みが続くことになります。施術しなければ――どれくらいでしょう、私が聞いた最長は、「固定療法で1か月」というものでした。1か月!? 1か月も痛いまんま? ていうか筋肉の炎症を固定で治すの!?と、お客さんから又聞きで聞いたときには驚きましたが、固定すればその部分の血流は格段に低下しますから、そりゃあ時間がかかります。いったいどういう事情で固定されていたのか。いまもって謎です。
 それはともかく、今回の私の寝違えは、ビシッの自覚がありませんでしたから仕方ありません、次善の策で解決を狙います。

 まず検査で見つかったのは、それ以前から取り掛かっていた左肘の癒着です。この癒着がなかなか手ごわくて、しばらく前から気が向いたときにごりごり剥がしているのですが一向に剥がしきれません。まあそのうちに、いつかは、なんてのんびり構えていましたが、悠長なことは言ってられなくなりました。すでに実際に首が痛いのです。
 それでちょっと真面目に、集中してごりごり剥がしてみました。作業はそれなりにうまくいきましたが、首の痛みは変わりません。うーん、寝違えの原因はここじゃなかったか……。
 左肘が一段落すると、今度は右肘から癒着が見つかりました。こちらはごく軽い、簡単な癒着です。さささっと一段落。
 と、ここで夜になって時間切れ。首は痛いままですが、原因はすぐには見つけられないかもしれません。諦めて、さっさと寝ることにしました。

 するとその日の未明、ふと目が覚めて、覚めるなり「ああ、上腕か」。直観がはたらきました。それで、検査で再確認してから半寝ぼけのまま、右腕上部の癒着を剥がして、眠いから、簡単なことだけしてまたそのまま寝ました。朝になって目覚めると、首の痛みは半減していました。
 その後、ちゃんと起きてから右上腕の癒着をもうひと剥がししましたら、1時間ほどで首の痛みは取れました。半日ばかり残っていた重い感じも、いつの間にかなくなっていました。もちろん、試しに動くと太極拳の動きもよくなっていました。晴れて、一件落着です。


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