のぞみ整体院
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整体・身体観 21

160308 会心と不満足

 数日前、友だちとの雑談のなかで、「会心の施術ができたけれどお客さんが喜んでいないときと、自分としては不満足な施術なのにお客さんは喜んでいるときと、どちらがうれしい?」と訊かれました。

 どちら? と訊かれても困るけど……といいながら、「私にとって会心の施術ができていても、お客さんから「ちっとも楽になっていない!」といわれたら、私は“会心”とは思えないんじゃないかなあ……」などと答えました。

 じっさいは、私のしている整体では、必ずしも施術直後に「楽になった」とお客さんが実感できるとは限りません。
 ですから、私も「よしッ」、お客さんも「おおっ」となって、施術直後に“会心”が確定する場合がある一方で、施術直後のお客さんはピンとこないながらも、次回の施術時に「こないだの後から調子がいいです」といわれて、「お、やっぱり前の施術はよかったのだな」と時間差で確認できる場合とがあります。

 施術直後の時点でもうすでに出来が不満足なときは、結果もほぼ確実に不満足です。それは私もイヤですから、そんなときは、お客さんがいくら喜んでおられても私は納得できなくて、時間の許すかぎりなんとかしようと焦ります。
 それでうまくいけば、はあ、やれやれ。その日の区切りがつけられます。うまくいかない場合は、お客さんに施術の進捗状況を説明して、様子をみてもらうようお願いします。これは、遠方からのお客さんには絶対できない終わり方ですし、たとえご近所の方でもなるべくなら陥りたくない事態です。幸い、あまり起こりませんが。


 それだけ、といえばそれだけのことですが、この話題を振ってきた友だちも専門職の職人さんです。ぜんぜん業種はちがっても、職人同士、おなじような経験があるのだろうなと思うとおもしろかったです。





 と、ここまで書いた後のある日、1年4ヶ月ぶりに、ひとりのお客さんが来られました。「しんどくなったらまた来てね」とお願いして、それきりになっていたお客さんです。ずいぶんお久しぶりです。

 「こないだの後からどうですか?」とお訊きすると、「あれからずっと体調は良かったです。1ヶ月ほど前から腰が疲れやすくなってきたので早めに来ました」と言われました。

 前回の記録を見直すと、作業内容を書きつらねた後に、施術の出来ぐあいが「すばらしい!!」と書いてありました。自分で書きながらおぼえていませんが、当時の私は施術がうまくいって大興奮だったようです。
 こんな時間差もうれしいです。


160328 足をぶつけて、手が痛い。

 数日前、「左手親指の付け根が痛い」となじみのお客さん(Pさん)が来られました。
 「なにかあったのですか?」とお訊きすると、来院4日前に左膝をぶつけた、といわれます。2日ほど膝の痛みはつづき、3日目にその痛みが治まった、かと思ったら、やがて左手が痛くなった、とのことです。

 「ふーん……」とお聞きしながら思ったのは、膝を打って、なんで親指が痛いのだろう? ということでした。

 身体は全体でひとまとまりです。ですから理屈だけからいえば、膝を打って、その痛みが治まったあとにどこが痛くなってもおかしくはありません。けれどまあ、人体の構造的にといいますか、私個人の経験的にといいますか、ココとココとは関連が深いけれど、ココとソコとは関連が浅い、というような大まかなパターンがあります。
 その理解でいくと、膝を打って肩がこる、あるいは膝を打って肘が痛い、はよくあるつながりといえますが、膝を打って親指が痛い、というのはちょっと変り種というか、痛みのあらわれが “ピンポイントすぎる” 印象をもちました。

 で、施術を始めると、流れが見えてきました。
 今回ぶつけた「左膝」以外にも、Pさんは、20年ほど前に「左すね」を傷めておられます。その2つのケガによる癒着が同時に影響した結果、左手親指の付け根の痛みになっていたようです。

 作業がひととおり済んだところで、Pさんに様子を訊くと、「ちょっとましだけどまだ痛い」。……あららら。まあでもすることはしたし、あとは少し時間がたてば筋肉のバランスが変わって痛みも引くかな、と見当がついたので、もう一度、しのこしがないか確認して、その日の施術は終わりにしました。


 後日、別件で来院されたPさんにその後の様子を聞く機会がありました。
 すると、施術の翌日には親指付け根の痛みがなくなって 、かわりに左手首と左肘が痛くなり、その翌日に、手首・肘の痛みがなくなったとのことです。
 改善に2日かかったのはちょっと予想外でしたが(もうちょっとすぐに消えると思っていた)、まあまあ、きれいな経過をたどられたかな、と思います。


161002 爪の施術

 先日、久しぶりに来られたお客さんの足の爪に施術する機会がありました。このかたには以前から、足のゆびや足の甲、裏、足首などに施術していましたが、足の爪というのは初めてのように思います。

 施術は、皮膚にするときとおなじように、爪の表面に、くっと竹串を置いて、ゆび全体をくくくっとひねるように動かします。当然ですが爪に竹串がめり込むわけはありませんので、竹串に意味があるのかは謎です。試しに竹串をどけて、ゆびだけをくくくっと動かすと、先程のような手応えを感じませんので、「やっぱりなにかしら意味はあるのだろうなあ」と、また竹串を置いて施術する、とそんなことをしていました。

 その日は時間が来たので切りにして、施術内容を振り返ってみると、これが見事に足の爪ばっかりの施術でした。作業自体はいたって地味で、とにかく淡々とこなした気分でいたのですが、ベッドから立ち上がられたお客さんを見ると、状態がとてもよいようでしたので、ちょっと不思議なほどでした。


 おもしろい仕事だったなあ。私の足の爪にも施術できるだろうか、と興味が湧いて検査をすると、うれしいことにできそうでした。子どものときに、左足の親ゆびに魔法瓶を落として、爪を真っ黒にしたことがありますので、そこに癒着ができていたようです。

 実際に自分にしてみると、爪とゆびの間がじわじわずれていくような、なかなか楽しい感覚でした。ははあ、なるほどなあ、たしかに癒着がとれておるわ……、とにんまりしちゃうような手応えです。
 施術が済むと、立ったときの足の踏ん張り具合が変化していました。まだしばらく、ちょこちょこ施術を続けてみようと思います。左足に顕著な、親ゆびの巻き爪と外反母趾がどう変化するかが、たのしみです。


161115 30年前の後遺症

 先日来られたお客さんは、めまいと立ちくらみにお困りでした。
 事情を丁寧にうかがって、施術を始めてみると、30年前に遭われた追突事故の、ムチウチの後遺症のようでした。

 ひととおり施術をして、「追突事故が原因と思います」と私の理解を伝えると、「30年前なのに!」と驚かれました。

 30年前でも80年前でも、後遺症はあらわれる――というのは私にはもう日常茶飯事で、お客さんに説明するときも、たいていの場合は、「そうなんですよー、不思議でしょう」と、世間話をするような気分でいます。
 ですが、ときどき、しみじみ、すごいことだなあと思います。「そうだよなあ、ふつうは驚くよなあ」、なんて。

 このかたは、また近々、来られます。施術の手応えはよかったので、はたして、どの程度、改善できているか。次回お会いするのが、楽しみです。


161222 牽引の後遺症

 しばらく前から、追突事故によるムチウチの後遺症でお困りのお客さん(Pさん)が来られています。

 主訴は腕と肩の痛みです。初めて来られたときは背中がガッチガチで、触るのが心配なくらいでした。「まるで昆虫の背中みたいですよ」とPさんに言うと、「そんなにひどいのですか!」と驚かれていました。

 実際、1、2回施術すると、状況が複雑なのは確認できました。単純なムチウチの場合、施術が数回うまくいくと、ふわっと背中全体がゆるんできます。それがPさんの場合は、背中がゆるんでも、首から上の部分だけは、固まったままなのです。
 Pさんからは、「あるところで首の牽引治療をしばらく受けつづけた後で症状が悪化した」とお聞きしていましたので、「牽引によるケガもあるのだろうか?」と考えはじめました。

 もちろんこれまでにも、「牽引をしてから悪化した」というお客さんが来られたことはありました。ですが、ここまではっきりと首と背中の連絡が切れた人は、私は初めてです。
 そこで、「牽引によるケガ」をとくに意識して施術していくと、肩の上側――肋骨と鎖骨に囲まれた、いわゆる胸郭出口の部分から、かなり多数の小さな筋断裂の痕、のようなものが見つかりました。

 ケガの仕方によって癒着のでき方はさまざまですが、こんなところに、こんなふうにできる筋断裂は、無理やりに首を引っ張られたから、としか想像できません。
 うまくすると良い治療法なのかもしれないけれど、牽引を悪くするとこうなるのか……、と、怖くなりました。


170117 ピアスの穴に施術の必要はあるか?

 私がケガの傷痕に注目する整体をしている関係から、先日、お客さんに「ピアスの穴は施術対象ですか?」と訊かれました。これはときどき訊かれることで、私自身も以前から気になっていたことです。私も、ずいぶん昔に両耳を開けているからです。

 なので、「自分のも含めて、ピアスをしている人の耳はちょいちょい検査してきましたが、あまり問題ではないようでしたよ」と、そのとき、その方には答えました。


 しかしその数日後、べつのお客さんの耳に、細かい細かい施術をする機会がありました。耳たぶの上のほうに、小さいけれど少々深刻な傷があったからです(ちなみにこの方の症状は、腰痛と足のしびれでした)

 その施術をしながら、私は、ピアス屋のおじさんに聞いた話を思い出していました。コチコチに緊張しながら穴あけ器具を買う私が、「どこに開けるといいですか?」と訊くと、おじさんは「下の方がいいよ。上は神経とか血管が通っていて、トラブルになりやすいから」。

 だから私のは下のほうに開けていて、これまでに調べたお客さんのも、比較的下のほうが多かった。けれどそれより上の、耳の中ほどに開けた穴なら、施術が必要な場合もあるかもしれない……。
 「ピアスの穴は大丈夫」ではなく、「耳たぶの下のほうなら大丈夫の可能性が高い」と思っておくほうが安心かも、と思い直しました。


170226 左腕の痛み

 以前から、両手をぐーっと上に伸ばすと、左腕の外側、ちょうど三角筋のあたりにちょっと重い痛みがありました。急に伸ばそうとすると左腕は動きがぎくしゃくで、「イタタ」となって伸ばしきれない、そんな状態です。五十肩にしては痛みの位置が低いよなあ、と気にはなっていましたが、数日前からようやく施術に取りかかりました。

 施術すべきポイントはどこかしら……、と探していくと、どうやら左手の甲から手首にかけての癒着が原因だったようです。気が向いたときにちょこちょこ施術をしていると、やがて左肩の緊張がゆるんできて、手を上に伸ばしても痛みが出なくなってきました。

 確かに左手の甲から手首にかけては、子どもの頃、ポキポキ関節を鳴らしたり、自転車に乗りながら壁ですりむいたりと、いろいろケガをしています。癒着もいろいろできているでしょう。

 施術がひと山越えたのかして、現時点ではもう痛みはありません。ですが、施術するべき癒着は、まだ残っている感じです。
 日常生活に差し障りはなかったですけれど、かなり以前から、ヨガとか準備運動をしていると、明らかに私はまわりの人より腕の動きが硬かった(曲がらない・伸びない)ですので、それが改善するとうれしいです。期待を込めて、しばらく施術を続けてみます。


170308 膝の痛みと変形と改善

 「膝が痛くて、水がたまるので、よく整形外科で抜いてもらっています。お医者さんには変形性膝関節症と言われました」とおっしゃるお客さんが来られました。右膝は20年前から、左膝は去年からその状態だとおっしゃいます。
 ですが、立ち姿を見ているかぎり、それほど膝の形が悪いようには見えません。そんなに深刻な変形ではないということかなあ……。お聞きすると、ケガの経験はほとんどないとのことです。なぜこの人の膝に水がたまるのだろう?? と首をかしげながら、施術を始めました。

 施術を始めると、癒着はちょこちょこ見つかりますので、探り探り、作業を進めます。1回目の施術が済んで、「これは私の印象ですけど、あんまりてこずらずに改善するんじゃないかと思います」と告げると、お客さんはやや半信半疑に「そうだといいです」とおっしゃって、帰られました。

 その数日後に、2回目の施術。このときは腰の筋肉に対してかなり集中した施術ができました。
 で、さらにその数日後、3回目の施術に来られました。このときお客さんはとてもご機嫌で、「膝がまっすぐ伸びました。もうサポーターは要らない状態です」と喜んでおられます。それを聞いて、私もとても嬉しかったので、2人して、「やあー、よかったよかった」といっしょに喜びました。
 もちろん、2回の施術で改善したといっても完全ではおそらくなく、活動量を増やしていけば、また痛みは出てくるはずです。それはお客さんにも説明していますし、納得してくださっています。ですから今はまだ、改善のきざし、おめでとう! の喜びです。


 この方の場合、膝の痛みは昨日今日に始まったわけではなく、水抜きも相当頻繁にされています。それでも変形は目立つほどではなく、改善の出足も快調でした。
 ですが、私は10数年前に、同じような経過で来られて、まったく別の展開をしたお客さんを知っています。ながらく膝の痛みがあって、水抜きも頻繁。ただしこの方は、変形がずいぶん顕著でした。そして、なかなか改善の目途が立たず、やがて来られなくなりました。

 この差は、どこから来るのだろう……と、それが知りたいです。
 お2人の経過を分けたひとつの大事な点は、おそらく、来院された時点での膝の変形の進み具合です。だから、この違いがどこから来るのかが知りたい。聞くかぎり、同じような治療を受け続けておられて、なぜ、進み具合に違いが出たのか。水の抜き方の加減か、活動量のちがいか、……。
 私が整体をするに当たって、このあたりに、なにか大事なヒントが隠されているように思うのですが、よくわかりません。ピンと来る答えは思いつかないまま、ずっと、頭の隅に引っかかっています。


170610 時間の個人差

 施術を受けられた後、ある人は「1週間、身体のだるさ・痛みが続き、そのあとに楽になる」と言われます。またべつの人は「2日ほど楽な日が続き、そのあとでだるさが出てくる」と言われます。
 はやい人は施術を受けられている最中から身体の状態が変化していることに気づかれますし、次にはやい人は施術が済んで、ベッドから立ち上がるときに変化に気づかれます。特徴的な人では、帰り道、電車の切符を買うためにお金を入れる、その手の上がり具合で変化に気づく、車に乗ってペダルを操作するときの足首の動かしやすさで変化に気づく、フライパンで料理をするとわかる、と言われた方もおられました。数日経たないと変化は実感できない、数ヶ月して、ふと変化していることに気づいた、という方もおられます。

 整体の作業は身体の修理作業ですから、なんらかの変化は生じているはず――と私は信じて施術をしています。ですが、その人にとってどのような変化が、どのタイミングで起こるかは、私には正確にはわかりません。


 先日、最近来られはじめたお客さんから、「1週間後に大事な用事がある。私は施術を受けると直後は楽になるけれど、そのあとの1週間はだるさが続く。だから次の施術は、その用事が済んでから受けても良いか?」と訊かれました。
 「もちろんです!」と答えながら、その方が、施術に来られてまだわずかしか経っていないのに、「直後は楽になるけれど、1週間だるさが続く」というその方なりのペースを把握しておられることに感動しました。

 施術がうまくいって体調が良くなられても、この、「その人なりの変化のペース」はあまり変わらないようです。痛みやだるさの程度が軽くなるなど、変化の振り幅は小さくなっていくようですが、2日かけて安定する人はいつまでたっても、だいたい2日かけて安定するし、1週間かけて安定する人は1週間かけて、と、変化の時間の振り幅はあまり変わらない。
 これはおもしろいことです。


 以前、EMDRという特殊な技法を使われる先生に、ちょっとお試しで指導を受けたことがあります。詳細は省きますが、EMDRには、右、左、右、左、とリズムを刻む作業が含まれます。そしてこの右、左のリズムにも、適切な速さに個人差があるそうです。

 こういった、時間についての個人差をつくるのは、身体なのか、脳なのか。
 積極的に答えを見つけよう・見つけられるとは思いませんが、興味深い差だなあと思います。


170620 健康体操について

 ひとくちに「健康促進のための」習慣とか体操とかいってもいろいろな方法があります。人によって、身体の状態によって相性がありますから、技法の一々について、あれが良いとかこれが悪いとか一概には言えません。
 ただ、とりあえずは、テレビとか本・雑誌で取り上げられる「健康体操」的なものの影響力には慎重であってほしいなあとは思います。

 というのも、「テレビでおすすめの健康体操をして悪化した」とか「本を読むと、痛くても歩いたほうが健康にいいと書いてあったから、がんばって歩いた」といって、状態をより悪くしておられる方が、私がお会いするお客さんのなかにも少なくないからです。

 マッサージもストレッチも体操も、合わないものを丁寧にすると簡単に身体を壊します。ましてや、痛いのに続ける、がんばる、というのは身体への「いじめ」になりかねません。
 いためない程度に、損なわない程度に、身体を鍛えるというのは、実際は、とても難しいことだと感じます。

 そこで、一応の目安として私がおすすめするのは「積極的三日坊主」を心がけつつ、適当になんでも試してみる、です。
 ちょっと試しにしてみるけれど、続けようとは思わない。続けたいな、していると体調がいいから・気分がいいからまたしたいな、と思えば、そこで初めて続けてみる。でもイヤになったらすぐやめる、という仕方です。

 身体によかれと思って努力して、それで却って悪くする、なんて損です。イイカゲンに、テキトウにしてみて飽きるくらいがちょうどいい、運よく自分に合っていて、無理せず続けられればラッキーだ、くらいに思っておくと、悪影響も少ないように思います。


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